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1 月 16 日 13:15-14:45
脳の構造については、ワシントン大学の アトラス が対話的でわかりやすい。
ここでは視覚系の分業体制について学んだ。網膜を出発した視覚情報処理は,
外側膝状体,第一次視覚野(V1),第二次視覚野(V2),MT(運動視に関与),
MST(同じく運動に関与),色情報処理(V4)などに細分化される。ただし,
途中のニューロンは二重拮抗性の反応もする場合がある。IT 野では複雑な
形態の分析が行われているにも関わらず,いわゆるおばあちゃん細胞は存在しない。
ハンドアウト
ハンドアウトその 2
ナイサー U. Neisser は「視覚情報処理では,まず,前注意的なレベルで目に
映った場面の中のいくつもの領域を図と地に分割し,その結果に基づいて,今
度は注意的なレベルで一つ一つの対象が何であるのかを認識するのではないだ
ろうか」と述べている。目に映る世界の中からどんな特徴が視覚情報処理の初
期段階でポップアウトするかが分かる。たとえば,まっすぐな T と傾いた T
との境界はポップアウトするが T と L との境界はポップアウトしな
い。T と L とは同じ構成要素からなっていることに注意。視覚情報処理の初期
にあっては,線分の傾きは重要であることが分かる。O と V との境界もポップ
アウトする。すなわち曲率のような単純な形態的特徴が重要である。ナイサー
の言う前注意的なレベルの処理がテクスチャー分離に影響していると考えられ
る。
図形の中から特徴の結合の仕方が異なっているターゲットを探し出すときには, ディストラクタの数が増えるほど時間がかかる。 被験者に「埋め草,ディストラクタ distracter」の図形の中からターゲットと なる図形を見つけ出してもらう課題。ターゲットとディストラクタが前注意的 なレベルで明確に異なっていればターゲットはポップアウトするはずであり, その反応時間は図形の数によらず一定になるはずである。
図形の中から特徴の結合の仕方が異なっているターゲットを探し出すときには,
ディストラクタの数が増えるほど時間がかかる。
ある特徴を備えたターゲットを探すのか,それとも,ある特徴を欠いたターゲッ トを探すのかで,視覚探索に要する時間は大幅に異なる。ターゲットが縦線入 りの円の場合は,探索曲線はフラットである。ターゲットが円でディストラク タが縦線入りの円の場合は探索時間はディストラクタの数が増加するに従って 長くなった。これは縦線という特徴がポップアウトしたためであろう。
同じことが垂直線の中から斜め線を探す条件と,反対に斜め線の中から垂直線 を探す条件とでも見られる。これは傾いた線を探す方が容易であった。斜め線 がポップアウトしてきたのであろう。
3番目の実験は,単独の線分の中からプラス+を探す条件と反対にプラスの中 から単独の線分を探す条件であった。この場合,プラスがポップアウトしたと 考えられる。
平行線の中から平行でない線を見つける課題と,その逆の課題とではどちらも
ポップアウトしなかったと思われる。閉じた円と円周の4分の1を欠いた円で
はどちらをターゲットにするかによってポップアウトするようである。
Ann Treisman は,このような一連の実験から,初期視覚の特徴統合理論を提案 した。それによると,視覚の初期段階においては,目に映った場面から何種類 もの単純かつ有用な特徴を抽出して符号化し,それを何枚もの特徴地図に書き 込む。そこには,目に映った世界の中で空間的な関係が保存されているのだが, その空間的関係は,そのままでは,後の処理段階で利用することができない。 だが,注意を集中することによって,すべての場所を示すマスターマップを参 照しながら,特定の場所にある特徴を読み取ってきて,それを統合することが できる。統合された情報は,そのあとの段階で,対象についてのファイルを作っ たり,更新したりするのに使われる。さらにファイルの中身は,再認ネットワー クにしまってある説明と照合される。そこには,既知の対象の特性や行動,名 称や重要度が記憶されている。
被験者に「埋め草,ディストラクタ distracter」の図形の中からターゲットと なる図形を見つけ出してもらう課題。ターゲットとディストラクタが前注意的 なレベルで明確に異なっていればターゲットはポップアウトするはずであり, その反応時間は図形の数によらず一定になるはずである