16 デジタルビデオ撮影・編集 入門
16.1 ビデオ撮影時の注意
「iLove iMovie2」の8章に撮影するときの注意事項が詳しく書いてありますが,主要な注意点は:
- 何を撮影してどんな作品を作りたいかという目的意識をはっきりさせる.あらかじめ絵コンテなどでイメージを書いてみるのも良い.
- 明るい場所で撮影する.屋内ならばなるべく明るい場所で撮影できるように工夫する.屋内より屋外のほうが明るい.屋外でも,天気のよいときに撮影した方がきれいに撮れる.
- 手ぶれに注意.できれば三脚や一脚を使う.だめなら,机に置いたり,カメラを持った手の肘をどこかに固定するなどの工夫をする.(三脚と一脚は1セットずつなら私物をお貸しします.)
- 撮りたいものにフォーカスがあっているかに注意する.急にズームイン・ズームアウトするとフォーカスがずれやすい.また,撮影対象が小さかったり中心からずれていると他のものにフォーカスがあってしまうことがある.
- ビデオカメラにヘッドフォーンをつないで撮影時に音をモニターし,きれいな音が取れるように注意する.どうしても外部マイクを使いたい人は申し出てください.
- 無意味なズームイン・ズームアウト,無意味にカメラを移動させることをしない.またこれらのズーミングや移動はゆっくり行う.いつも見ている感覚で眼の動きのようにカメラを操作すると,速すぎて何が写っているのか分からない.
- 同じシーンを色々なアングルや色々なズームで撮影して,あとで出来がよいものを選んだり,色々なシーンを組み合わせたりするのは良い方法.また繰り返し撮影できる場合は,最初の撮影は練習テイクとして捨て,その後納得がいくまで何回か取り直して,あとで一番よいものを選ぶのも良い方法.
- だらだらとカメラを回さない.シーンを意識する.またひとつのシーンの撮影開始前と撮影終わりには少し余分に撮影する.その方が編集時にシーンを取り込みやすい.
- 撮影時はどんなシーんをどの順番で何秒撮影したかのノートを取っておく.このノートが,あとで編集するときに威力を発揮する.シーン撮影前にそのカットの名前をカメラで撮っておくと便利.
- 被写体(画面の中心になるもの)は大きめに撮る.日頃見なれている距離では,風景にしずんでしまう.
- 以上のことを一人でやるのは無理だと思います.カメラ係,記録係,撮影対象決定係,俳優など,3人くらいのチームを作って撮影するのがよいと思います.
- 時間をかけてこだわればこだわるほど,良い作品になります.編集段階で撮影した素材の欠点に気付いたら,もう一度撮り直しましょう
16.2 デジタルビデオ
16.2.1 動画のABC
- フレームレート
- いくつもの画像を連続して切り替えることにより絵が動いて見えます.この画像の切り替え速度のことをフレームレート(fps,Frame per second)といいます.日本やアメリカのテレビはNTSC方式をつかっており,30fpsです.映画のフィルムは24fpsです.10fpsくらいまで遅くしても人間の目には動いて見えるそうです.
- 解像度
- NTSC方式の場合、個々の画像(フレーム)は525本の電子ビームの走査線で書かれています.(実は2フレーム使って525本を書いています.このような間引き方式をインターレスといいます.)つまり,垂直方向の解像度は525ピクセル(実際は480ピクセル程度)です.パソコンの画面サイズで言えば、大体VGA(640x480ピクセル)程度です.
- ノンリニア編集
- テープを切り貼りして編集するのではなくて、動画のデジタルデータを直接編集する方式をノンリニア編集といいます.ノンリニア編集は,高速なCPUや大量のメモリとディスク容量を必要とします.
- FireWire (別名IEEE1394,i.Link)
- デジタルビデオカメラとパソコンをつなぐときにも使う接続形式.高速でデジタルデータを転送できる.
16.2.2 動画のデータ量と圧縮
フルカラーのVGAサイズの画面を30fpsで表示すると、
フルカラー(3バイト)×(640×480)×30=27,648,000バイト/秒
つまり,1秒の動画が27MBにもなります.3分の動画は4.6GBです!!
ちなみにノンリニア編集するデータはハードディスクに記録してあり、このデータを読み込んで編集しますが、ハードディスクの読み書きの速度は最新の物でも33MB/sから100MB/sですので,古いHDだと27MB/sの動画の読み出しが追いつきません.ノンリニア編集は,それほどパソコンにとって負荷の高い仕事なのです.
このように動画は静止画と比べるとけた違いに大きなデータになってしまうので,圧縮する必要があります.圧縮には静止画と同じような方法以外に、フレーム間の類似性を利用した圧縮も使われます.
CDは音声保存用のメディアでしたが、44.1kHz,16ビットステレオサウンドのデータ量は,毎秒170KB(正確には150KB/s)に相当します.4倍速のCDドライブならこの速度の4倍で読み出すことができるわけです.編集済みの動画をCD-Rに焼いて公開するときは、この程度のデータ量に落とさないといけません.つまり,27MB/sを600KB/sに落とす場合は50分の1のデータ量に圧縮する必要があります.
自分のWebサイトで公開するときは、ダウンロードするユーザのバンド幅(どれくらいの速度でデータをダウンロードできるか)にも気をつけなければいけません.最近はやりのADSLでも数Mbps,つまり,最高条件でも毎秒1MBくらいのデータしかダウンロードできません.アナログ電話回線の場合は、64kbs,つまり毎秒8KBのデータしかダウンロードできません.
本学では一人あたりのディスク容量が100MBと制限されているので、これにも注意する必要があります.民間プロバイダーで公開するときも,このディスク容量の制限に気をつけましょう.
私がWebで公開しているQuickTime形式の動画(BEPLinux3.mov)は,20分の動画のサイズが27MBですので,かなり圧縮してあります.フレームサイズは240×180、12fpsの動画で、22KB/sになっています.iMovie2を使うと、何も考えなくてもこれくらいのサイズにまで圧縮してくれます.
キャンパスガイドのビデオは,HIGH版が15fpsで32.5KB/sです.動画部分はMPEG4で圧縮してあるようです.LOW版なら12KB/sです.最近は圧縮技術が進んでいるので、ここまでデータ量を減らしても(約1000分の1)こんなにきれいな動画になります.
16.2.3 ファイルと動画の形式
- QuickTime (.mov)
- 狭い意味では,Macintosh標準の動画形式.
- Video for Windows (.avi)
- Windows標準の動画形式.デジタルビデオテープをWindowsパソコンに取り込むと,このavi形式で保存される(4MB/s).MicrosoftはWindows Media Playerを推進している.
- MPEG1
- ビデオCDに使われる形式(最大150KB/s).320×240のサイズの動画を30fpsで再生できる.
- MPEG2
- DVDに使われる形式.720×480のサイズの動画を30fpsで再生できる.4.7GBに2時間の映画を収めることができる.
- MPEG4
- 高い圧縮率を目指して開発された.最新のQuickTimeはこのMPEG4で保存できる.
- DVフォーマット(DV1394)
- DVカメラの保存形式(3MB/s).30分のDVテープは5.5GBのデータを記憶できる.
iMovie2では,以下の場合に応じた形式で編集済みのデータを書き出すことが出来ます.
- カメラに書き出す:DVフォーマットでテープに書き戻す.データのバックアップや移動に適している.
- CD-Rに保存するできるサイズまで圧縮して書き出す.
- WWWで公開できるサイズまで圧縮してQuickTime形式で書き出す.
- 電子メールで添付できるサイズまでさらに圧縮してQuickTime形式で書き出す.