今日は、レポート作成や論文作成のためのWordの使い方ですが、その前に、レポートや論文の構成について説明します。
以下の内容は、ガイダンスのときに紹介した文献
を元にしています。
一般的に、文書の構成は「起承転結」だと言われています。 特に、「転」の部分で意外性を持たせ、それをきっかけにして、感動的な内容につなげていきます。 しかし、レポートや論文では感動はいりません。 したがって、レポートや論文で「転」は当てはまりません。
レポートや論文の構成は、「起承転結」よりも「序論・本論・結論」です。 序論、本論、結論のそれぞれについては、以下のように組み立てます。
序論では、まず、レポートや論文の内容を短く説明します。 続いて、以下のようなことを書きます。
(i) 本論の主題となる問題は何か,
(ii) その問題をなぜ−どんな動機によって−取り上げたか,
(iii) その問題がなぜ重要か,
(iv) 問題の背景はどんなものか,
(v) どういう手段によってその問題を攻めようとするのか,
この部分は、文献[1]のp.36から引用しました。
本論には、多くの内容が含まれるので、分かりやすい順序で書くことに気をつけなくてはいけません。 基本的な考え方は、次のどちらかです。
「概略から詳細へ」なら、はじめに大まかな話をし、段階的に細かい話をします。 「理論展開の順序に従う」なら、「Aである。AならばBである。したがってBである。」のように話を進めます。
次のような考え方もあります。
例えば、社会事件を取り上げる場合、何が起きたかを時系列で書くべきです。 また、日本全国を比較する場合は、北から南へ(または南から北へ)説明すると分かりやすくなります。
結論では、以下のようにします。
(a) 本論の主なポイントを簡明に列挙してまとめ,
(b) それらの重要性を強調し,また将来の発展への道を示唆する
この部分は、文献[1]のp.40から引用しました。
見出しとは、レポートや論文の「第1章 はじめに」や「1.1 問題設定」の部分のことです。
見出しには階層があります。 論文では、階層の高い順に「章」、「節」、「小節」です。 レポートでも論文と同じですが、章を設けず、「節」、「小節」、「小々節」とする場合があります。 なお、Wordでは「小節」を「項」とよんでいます。
レポート作成や論文作成では、最初から順番に書き進めるのではなく、まず見出しを作成し、それから文章を作成するほうが、うまくいきます。 見出しが完成した段階で、レポートや論文の全体像が見えるからです。
見出しの作成では、パソコンではなく、紙と鉛筆を使った方がよいです。 まず、これからレポートや論文で書こうとしていることのキーワードを、思いつくままに紙に書きます。 そして、関連するキーワードを丸で囲んだりして、段階的に固まりを作っていきます。 最後に、最も大きな固まりに章見出し、次に大きな固まりに節見出し、その次に大きな固まりに小節見出しをつけます。 なお、文献[1]のp.52では、紙に書いたキーワードを「構成表」とよんでいます。
見出しが完成したら、次に文章を書きます。 文章は適宜、段落に区切られます。 実は、段落は感覚で区切ってはいけません。 ここでは、文献[1]の第4章「パラグラフ」の内容を紹介します。 なお、文献[1]では段落のことをパラグラフとよんでいます。
まず、「1つの段落は1つのトピックを表す。」です。 つまり、1つの段落では1つのことを言うべきで、そのためなら、段落が長くても短くても構わないのです。
段落の中で最も重要な文を「トピック・センテンス」とよびます。 段落は、1つのトピック・センテンスと、それ以外の文から作られます。 トピック・センテンス以外の文は、トピック・センテンスの補足説明という位置付けになります。
トピック・センテンスは、できるだけ段落の最初にすると、分かりやすくなります。 読むときに、最も重要な文、補足説明、補足説明、という順序で読めるからです。
なお、段落は長くても短くても構わないと言いましたが、文献[1]のp.73には、一応の目安として、段落の標準的な長さは200字ないし300字としています。
Wordには、見出しを管理する機能があります。 それを使うと、
ことができます。
短いレポートを書いているうちは、見出しの字の大きさを規則的に変えることや、見出しを追加、削除した後で番号を振り直すことは、手作業でもできます。 しかし、卒業論文レベル(例えば100ページ)になると、修正箇所は膨大な量になり、見出しの字の大きさがバラバラになったり、見出し番号が重複するなど、失敗する可能性が高まります。 そうならないためにも、Wordの見出し管理機能を利用しましょう。
ここでは、
に書いてある方法を紹介します。 文献[2]は、卒業論文レベルの文書をWordで作成するときに役立つテクニックをまとめたものです。
見出しの例は以下のとおりです。
文献[2]では、見出しを考える段階ではパソコンは使わず、紙と鉛筆を使って、見出しを考えることに集中したほうがよいとしています。 そして、見出しが完成したら、パソコンに向かいます。 Wordを起動し、新規文書のウィンドウを開き、見出しを一行ずつ入力します。 この段階では、「第1章」のような番号は入れませんし、字を大きくしたりもしません。 目次を作っているようにも見えますが、目次ではなく、見出しの一覧です。 文献[2]では「目次案」とよんでいます。
見出しを入力したら、次に、見出しに階層を設定します。 Wordでは、階層の高い順に「章」、「節」、「項」とよんでいます。
レベル | 見出し | 階層 |
---|---|---|
レベル 1 | 見出し 1 | 章 |
レベル 2 | 見出し 2 | 節 |
レベル 3 | 見出し 3 | 項 |
階層の設定は、Wordをアウトライン・モードに切り替えてから行います。 アウトライン・モードとは、階層をインデント(字下げ)で表す表示モードです。 リボンの「表示」をクリックし、「アウトライン」ボタンをクリックしてください。 なお、表示モードの切り替えでは、ステータスバー(ウィンドウの一番下)が便利です。 ステータスバーの右側に、印刷レイアウトやアウトラインのアイコンがあります。
アウトライン・モードですべての見出しを選択し、「見出し 1 に変更」ボタンをクリックします。 すると、すべての見出しがレベル 1(章見出し)になります。
レベルを上げたり下げたりするには、リボンの矢印ボタンを利用します。 矢印ボタンは左から順に「見出し 1 に変更」、「レベル上げ」、「レベル下げ」、「標準文字列」です。 矢印ボタンを利用して、見出しをレベル 2(節見出し)やレベル 3(項見出し)にしてください。 キーボードなら、tabキーでレベル下げ、shift+tabキーでレベル上げができます。
リボンの上三角ボタンや下三角ボタンで見出しを移動したり、プラス・ボタンやマイナス・ボタンで見出しの展開や折りたたみができます。 展開や折りたたみは、見出しの左のアイコンのダブルクリックでもできます。
続いて、見出しのフォントなどを変更します。 見出しのフォントの種類や大きさ、インデントや間隔などを、見出しのスタイルとよびます。 スタイルの設定は、印刷レイアウトのほうが分かりやすいので、印刷レイアウトに切り替えてください。 なお、印刷レイアウトで見出しの先頭に点が表示されますが、これらの点は目印であり、印刷はされません。
ここでは、次のようにスタイルを設定します。
レベル | 見出し | フォント | サイズ | インデント(左) | 間隔(前後) |
---|---|---|---|---|---|
レベル 1 | 見出し 1 | MS ゴシック | 16ポイント | 0字 | 0行 |
レベル 2 | 見出し 2 | MS ゴシック | 14ポイント | 0字 | 0行 |
レベル 3 | 見出し 3 | MS ゴシック | 12ポイント | 0字 | 0行 |
リボンの「ホーム」をクリックし、「スタイルウィンドウ」ボタン(Windowsの場合は「スタイル」の右の角)をクリックして、スタイル・ウィンドウを開きます。
スタイル・ウィンドウの「見出し 1」の右端の「a」をクリックし、「スタイルの変更」(Windowsの場合は「変更」)をクリックすると、「スタイルの変更」ウィンドウが開きます。
「名前」欄が「見出し 1」であることを確認し、フォントを「MS ゴシック」、大きさを「16」に変更します。 インデントや間隔を設定するには、左下の「書式」をクリックし、「段落」をクリックして、「段落」ウィンドウを開きます。
「段落」ウィンドウで、見出しのインデントや間隔が設定できます。
「見出し 2」や「見出し 3」でも、同じようにスタイルを設定してください。
最後に、見出しに番号を振ります。 ここでは、次のように番号を設定します。
レベル | 見出し | 番号 | 番号に続く空白 |
---|---|---|---|
レベル 1 | 見出し 1 | 第1章 | 全角スペース |
レベル 2 | 見出し 2 | 1.1 | 全角スペース |
レベル 3 | 見出し 3 | 1.1.1 | 全角スペース |
カーソルを1行目に移動し、リボンの「ホーム」をクリックし、「アウトライン」ボタンをクリックし、「リスト ライブラリ」の中の「第1章、第1節、第1項」をクリックします。
すると、レベル1の見出しに章番号、レベル2の見出しに節番号、レベル3の見出しに項番号が、自動的に振られます。
これでもよいのですが、節番号は「1.1」形式、項番号は「1.1.1」形式にしたいです。 また、番号と見出しの間が開きすぎています。
再び「アウトライン」ボタンをクリックし、「新しいアウトラインの定義」をクリックします。 すると、「アウトライン」ウィンドウが開きます。
「アウトライン」ウィンドウの「レベル」の「1」をクリックすると、レベル1の番号が設定できます。 「オプション」ボタンをクリックし、「番号書式」の「第1章」の後に全角スペースを追加します。 「整列」と「インデント」(Windowsでは「左インデントからの距離」と「インデント位置」)を0mmにします。 「番号に続く空白の扱い」を「タブ文字」から「なし」に変更します。 すると、番号と見出しの間が全角スペースになります。
再び「アウトライン」ボタンをクリックし、「新しいアウトラインの定義」をクリックして、「アウトライン」ウィンドウを開きます。 「レベル」の「2」をクリックして、レベル2の番号を設定します。 「番号書式」の「第1節」の先頭にカーソルを移動し、「次のレベルの番号を含める」メニューの「レベル1」を選択すると、「1第1節」となります。 (数字の背景が灰色なのは、変化するという意味です。) 半角ドットを追加し、「第」と「節」を削除し、最後に全角スペースを追加します。 「整列」と「インデント」(Windowsでは「左インデントからの距離」と「インデント位置」)を0mmにします。 「番号に続く空白の扱い」を「タブ文字」から「なし」に変更します。 すると、レベル2の見出しの番号が「1.1」形式になり、番号と見出しの間が全角スペースになります。
再び「アウトライン」ボタンをクリックし、「新しいアウトラインの定義」をクリックして、「アウトライン」ウィンドウを開きます。 「レベル」の「3」をクリックして、レベル3の番号を設定します。 「番号書式」の「第1項」の先頭にカーソルを移動し、「次のレベルの番号を含める」メニューの「レベル1」を選択し、続けて「レベル2」を選択すると、「11第1項」となります。 半角ドットを追加し、「第」と「項」を削除し、最後に全角スペースを追加します。 「整列」と「インデント」(Windowsでは「左インデントからの距離」と「インデント位置」)を0mmにします。 「番号に続く空白の扱い」を「タブ文字」から「なし」に変更します。 すると、レベル3の見出しの番号が「1.1.1」形式になり、番号と見出しの間が全角スペースになります。
これで、見出しが完成しました。 見出しに変化があれば、見出しの番号が自動的に変更されます。 例えば、「先行研究」をレベル1に変更してみましょう。 「先行研究」をドラッグし、リボンの「ホーム」をクリックし、「見出し1」をクリックします。 すると、「先行研究」が章見出しになり、それ以降の番号が自動的に変わります。
もし、アウトラインの設定がうまく適用されなければ、番号上で右クリックし、「自動的に番号を振る」をクリックしてください。 すると、設定が適用されます。
[見出し番号自動化]日本三大祭りや新御三家など、三大何々や何々御三家とよばれるテーマを1つ探してください。 そして、例にならって、見出しだけのWord文書を作成してください。 見出しのスタイルは、授業でやったように操作して、同じレベルは同じスタイルになるようにしてください。 見出しの番号も、授業でやったように操作して、自動的に振ってください。
レベル | 見出し | フォント | サイズ | インデント(左) | 間隔(前後) |
---|---|---|---|---|---|
レベル 1 | 見出し 1 | MS ゴシック | 14ポイント | 0字 | 0.5行 |
レベル 2 | 見出し 2 | MS ゴシック | 12ポイント | 0字 | 0.5行 |
レベル 3 | 見出し 3 | MS ゴシック | 11ポイント | 0字 | 0.5行 |
レベル | 見出し | 番号 | 番号に続く空白 |
---|---|---|---|
レベル 1 | 見出し 1 | 1 | 全角スペース |
レベル 2 | 見出し 2 | 1-1 | 全角スペース |
レベル 3 | 見出し 3 | 1-1-1 | 全角スペース |
今日の演習4の答案(Wordファイル)をメールで提出してください。 差出人は学内のメール・アドレス(学生番号@cis.twcu.ac.jp)とし、宛先はkonishi@cis.twcu.ac.jpとします。 メールの本文には、学生番号、氏名、科目名、授業日(10月17日)を明記してください。