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情報処理技法(リテラシ)II 第1回

目次
索引

教員の紹介

名前
小西 善二郎(こにし ぜんじろう)
肩書き
東京女子大学非常勤講師
連絡先
konishi@cis.twcu.ac.jp

注意1. この授業には、アシスタントがついています。 授業中、パソコンがおかしくなったときなどは、アシスタントに質問してください。

注意2. この授業の情報は、私のホームページ

http://www.cis.twcu.ac.jp/~konishi/index-j.html

に掲載しています。 必要に応じて参照してください。


シラバス

題目

アカデミック環境における統合的な文書作成

内容

情報処理技法(リテラシ)Iをもう1段階強化して実践的にアカデミックライティング技術とアカデミックなプレゼンテーション技術を習得する。 そのために、Officeソフトを効果的に利用するためのスキルを身につける。 また、アカデミックライティングやアカデミックなプレゼンテーション資料の作成を通して、論理的思考力を養う。 すなわち文献検索の方法やインターネットの利用方法を学び、情報を効率良く検索し批判的に取捨選択し、それらを用いて生産的に自らのレポートや論文、発表資料として構成しなおす作業を、情報技術を用いて効率良く行える力を身に付ける。

到達目標

教室外の学習方法

スケジュール欄を参照のこと

教材(テキスト)

http://www.cis.twcu.ac.jp/~konishi/index-j.html

教材(参考書等)

授業内容に応じて参考資料を紹介する。

成績評価方法

学生へのフィードバック

課題がうまく進められない場合は適宜指示をする。

成績評価基準

以下の4点が評価基準である。

備考

課題はすべて提出すること。
試験は実施しない。
メール・アドレス: konishi@cis.twcu.ac.jp

スケジュール

スケジュール
回数 授業内容 教室外学習
内容 時間の目安
1 ガイダンス シラバスの内容を確認すること。 60
2 情報検索(文献検索) 情報処理技法(リテラシ)Iテキストを読むこと。 60
3 情報検索(統計データの検索) 情報処理技法(リテラシ)Iテキストを読むこと。 60
4 ワード(レポートや論文の構成) 情報処理技法(リテラシ)Iテキストを読むこと。 60
5 ワード(レポートや論文の作成に必要な操作方法) 情報処理技法(リテラシ)Iテキストを読むこと。 60
6 エクセル(統計データの集計) 情報処理技法(リテラシ)Iテキストを読むこと。 60
7 エクセル(統計グラフの作成) 情報処理技法(リテラシ)Iテキストを読むこと。 60
8 パワーポイント(プレゼンテーション・スライドの構成) 情報処理技法(リテラシ)Iテキストを読むこと。 60
9 パワーポイント(プレゼンテーション・スライドの作成に必要な操作方法) 情報処理技法(リテラシ)Iテキストを読むこと。 60
10 テーマの設定 最終レポートと最終プレゼンテーション・スライドのテーマを考えておくこと。 180
11 最終レポートの作成(1)基本的な部分 授業後も最終レポートの作成を続けること。 240
12 最終レポートの作成(2)効果的な部分 授業後に最終レポートを完成させること。 240
13 最終プレゼンテーション・スライドの作成(1)基本的な部分 授業後も最終プレゼンテーション・スライドの作成を続けること。 240
14 最終プレゼンテーション・スライドの作成(2)効果的な部分 授業後に最終プレゼンテーション・スライドを完成させること。 240
15 まとめ (授業の進みぐあいや受講者の反応を考慮し、スケジュールには多少の変更を加えることがある。) 120

ガイダンス

授業の内容

リテラシIでは、大学生活でパソコンを利用するときに、最低限必要となる知識を勉強しました。 タイピングの練習をしたり、ファイルやフォルダの操作もしました。 ただ、今やほとんどの場面でパソコンの代わりにスマートフォンが使われ、パソコンを使うのはレポート作成や論文作成のときぐらいでしょう。

リテラシIIでは、このレポート作成や論文作成を想定して、パソコンの使い方を勉強します。 レポートや論文を書くときに、どのように情報検索をすればよいか、また、どのようにワードやエクセルを使えばよいかについて説明します。 また、研究発表も想定し、どのようにパワーポイントを使えばよいかについても説明します。 そして、各自が興味のあるテーマを設定してもらい、そのテーマに関するレポートと、プレゼンテーション・スライドを作成してもらいます。

情報検索、ワード、エクセル、パワーポイント

情報検索については、まず、文献検索について説明します。 レポートや論文を作成するとき、情報源がインターネットだけだと説得力がありません。 どうしても、書籍や論文雑誌が必要になります。 授業では、データベースを用いて書籍や論文雑誌を探してみます。 さらに、統計データの検索について説明します。 レポートや論文で、具体的な統計データがあれば、さらに説得力が増します。 授業では、公開されている統計データを探してみます。

ワードについては、まず、レポートや論文の構成について説明します。 序論、本論、結論という順序や、段落の区切り方などです。 そして、レポートや論文を作成するときの、ワードの操作方法について説明します。 目次を作成する方法や、文献を引用する方法などです。

エクセルについては、まず、統計データの集計について説明します。 アンケートのようなデータを表にまとめます。 そして、統計グラフの作成について説明します。 棒グラフだけでなく、折れ線グラフや円グラフなどを作成します。

パワーポイントについては、まず、プレゼンテーション・スライドの構成について説明します。 文字をぎっしり書いてはいけないことなどです。 そして、プレゼンテーション・スライドを作成するときの、パワーポイントの操作方法について説明します。 テキストボックスや矢印を利用した図の作成などです。 最後に、プレゼンテーションを行う際の注意点について説明します。 聴く人に話しかけるような態度をとることなどです。

最終レポートと最終プレゼンテーション・スライド

レポート作成、論文作成、研究発表を目的として、ワード、エクセル、パワーポイントを勉強したので、最後に、まとまった内容のレポートとプレゼンテーション・スライドを作成してもらいます。 テーマは、ある程度自由に選べるようにするので、興味のあるものに決めるとよいでしょう。 授業中に作業ができるようにするので、じっくり取り組むようにしてください。


アカデミック・ライティング

アカデミック・ライティングとは

この授業のシラバスには、「アカデミック・ライティング」と書かれています。 この言葉は、元々「学術的な英語表現」のような意味で使われていました。 この授業では、そうではなく、「日本語でレポートや論文を書く方法」という意味です。

レポートや論文の書き方については、今まで「習うより慣れよ」と考えられていて、あまり授業になることはありませんでした。 それぞれの専門分野で、論文の書式が少しずつ違うこともあり、ゼミの先生が決まってから、その先生に教わるべきとされていました。

最近は、1年生向けに「アカデミック・ライティング」という授業を設置し、どの専門分野にも共通する、基本的な部分だけは説明しておく、という流れになっています。 今日は、ガイダンスの時間を利用して、レポートや論文の書き方の要点を説明します。

以下の内容は、文献

を元にしています。 この本は、レポートや論文の書き方の古典とよべるもので、その後の多くの類書で紹介されています。 題が「理科系」となっていますが、多くの内容が文科系にも通用します。

1. レポートや論文は文学作品ではない

ここでいう「文学作品」とは、人間の心の動きが中心的に描かれ、読者に感動を与えるものです。 レポートや論文では、著者の心の動きは不要です。 著者の感想を書くならば、「意見」という形にします。 また、感動的な文章を書く必要もありません。 それよりも、正確に情報を伝えるほうが重要です。

2. 一つのレポートや論文の主題は一つ

文献[1]のp.18には「一文書一主題」と書かれています。 ここで「主題」とは、そのレポートや論文で何が論じられているかです。 主題が曖昧で、何だか色々なことが書いてあるレポートや論文は、説得力がないです。 主題を明確にし、どうしても主題が複数あるのなら、レポートや論文を分割すべきです。

レポートや論文を書くとき、最初から主題が明確であれば、この問題は起こりません。 そうでなければ、主題をはっきりさせる作業が必要になります。 色々な資料にあたり、曖昧だった主題を明確にすることが、実は、レポート作成や論文作成につながります。

3. 一番言いたいことを書いてみる

資料を調べ尽くし、結論を決めてから、レポートや論文を書き始める、というイメージがあるかもしれません。 実際は、資料を調べることと、文章を書くことは、並行して行われます。 最初のうちは、一番言いたいこと、つまり、仮の結論を無理矢理文章にしてみるとよいでしょう。 これによって、何を調べるか、何を書くかが明確になります。 調べた結果、間違っていたら、違うという「結論」が得られます。 なお、文献[1]のp.22では、仮の結論のことを「目標規定文」とよんでいます。

4. 事実と意見を区別する

レポートや論文の枠組みを一言で言うと、「調査した事実に基づいて、結論となる意見を述べる。」となります。 ここで「事実」とは、物理法則や歴史的事実だけでなく、資料に書かれている内容も事実となります。 また「意見」とは、著者が考えたり思ったりしたことです。 本当は意見なのに、あたかも事実のように書いてしまうと、根拠がないレポートや論文と見なされ、説得力がなくなってしまいます。

5. 明快・簡素な文章にすること

これについては、文献[1]のp.8から引用します。

(a) 一文を書くたびに,その表現が一義的に読めるかどうか−ほかの意味にとられる心配はないか−を吟味すること,

(b) はっきり言えることはスパリと言い切り,ぼかした表現(……といったふうな,月曜日ぐらいに,……ではないかと思われる,等々)を避けること,

(c) できるだけ普通の用語,日常用語を使い,またなるべく短い文で文章を構成すること.

(a)については、例えば、次の語句を考えます。

例1 修復された国宝級の寺院の仏像

修復されたのは寺院なのか仏像なのか、また、国宝級なのは寺院なのか仏像なのか、いくつかの意味にとれてしまいます。

これを解決する一つの方法は、句読点(特に読点)を利用することです。 読点の使い方には色々な考え方があり、文献[1]のp.143でも取り上げられています。 ここでは、「修飾語は意味が通る最も近い語句にかかる、そうでない場合は読点を使う。」とします。 すると例1は、修復されたのも国宝級なのも寺院となります。 修復されたのは仏像で、国宝級なのは寺院なら、

例2 修復された、国宝級の寺院の仏像

修復されたのも国宝級なのも仏像なら、

例3 修復された、国宝級の、寺院の仏像

または

例4 修復された国宝級の、寺院の仏像

とします。

読点にも限界があり、修復されたのは寺院で、国宝級なのは仏像の場合は、次のように語順を変えるしかありません。

例5 修復された寺院の国宝級の仏像

(b)については、例えば、次の文を考えます。

例6 近年の異常気象は地球温暖化が原因ではないかと思われる。

いかにも学問的な言葉に聞こえますが、誰がそう思っているのか、よく分かりません。 もし、異常気象と地球温暖化についてレポートや論文を書いているのなら、これは結論になるので、

例7 私は、近年の異常気象は地球温暖化が原因だと思う。

と言うべきです。

(c)については、文は長くなれば長くなるほど、主語と述語の対応が混乱しやすくなります。 例えば、

例8 私は地方の大学の学生にアンケート調査を行い、その結果、大都市での就職を希望していた。

この文の主語は「私」なのに、就職を希望しているのは「学生」なので、何だかおかしいのです。 次のように2つの文に分割し、「学生」を補います。

例9 私は地方の大学の学生にアンケート調査を行った。その結果、それらの学生が大都市での就職を希望していることが分かった。


参考文献


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2018年9月26日更新
小西 善二郎 <konishi@cis.twcu.ac.jp>
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