セックスはなぜ楽しいのか?

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少なくとも,人間には男と女しかいません。 なかには13種類の性を持つ細菌も発見されているそうですが, ほとんど生物は,有性生殖によって遺伝子交配, すなわち遺伝情報のかき混ぜをおこなっています。

ところが有性生殖はコストがかかる繁殖方法なのです。 ご存知のとおり,生殖とは,一つのものを二つに分けるプロセス(減数分裂)と, 性という二つのものを一つにまとめるプロセス(交配)から成り立っています。 これは,手間のかかる方法であるというわけです。 加えて,有性生殖による遺伝子組み換えは,良いことばかりではありません。 悪いことも同時に起こるのです。 良い組み換えが起こるか,悪い組み換えが起こるのかはまったくのランダムです。 このことを,進化には方向性がない,と言ったりしますよね。

さらに,有性生殖にかかるコストについてですが, たとえば,あるメスが交尾をせずに子どもを増やせるようになったら, そのメスは有性生殖を行なう他のメスに比べて,大きなメリットを手に入れたことになります。 そのやり方は,当然子どもたちにも受け継がれ, その子どもたちも母親と同じメリットが得られるのです。 リチャード・ドーキンスが, 生物は遺伝子によって利用される「乗り物」に過ぎないと書いたとおり,遺伝子にとってみれば,全遺伝情報を子どもに伝えた方がうれしいわけですから。

では,有性生殖がおこなわるのはぜ? 俗っぽく言うとセックスはなぜ楽しいのか?ということになりますねー。

生殖とは,遺伝子を再編成することによって優秀な遺伝子を子孫に残そうとすること, は間違いが無いでしょう。でも,母親は単性生殖によって得られる利益を放棄してまで, そうする理由はなぜなのでしょうか?

一つの理由は,寄生生物やウィルスなどの細菌との関係があると言われています。 ある個体群が,有性生殖によって遺伝的多様性を確保しなければならない理由は, もちろん環境の変化に対応できるようにするためだと考えられています。 ところが,寄生者である寄生生物や細菌の方が, 宿主よりも繁殖頻度が高いのが普通です。仮に,宿主が進化によって, 寄生者排除するメカニズムを進化させたとしても, 寄生者はこれをすぐに出し抜くことができるわけです。 こうして,生物間の競争の中には絶えず変わり続けなれば生き残れないという宿命みたいなものが生まれます。このことについては, 赤の女王仮説も参照してください。 単性生殖よりも有性生殖の方が,はるかに進化の速度が早く, しかも遺伝的多様性を確保できるわけですから,ほとんどすべての種において, 進化の過程で有性生殖が勝ち残ったと考えることができるわけです。 これがセックス(有性生殖)が楽しい理由の一つかもね。

ということで,今回の雑学はおしまい。