情報処理技法（Javaプログラミング）I 第7回

索引

変数と代入文（4）

変数の値の増減

以前、変数に格納されたデータは変更可能であると説明しました。変数 x にデータ100を格納した後で、101を格納すると、100は上書きされ、 x の値は101になるという話でした。この仕組みを利用すると、変数の値を増加させることができます。

/*  1*/ class IncreaseTest { // 増加のテスト
/*  2*/     public static void main (String[] args) {
/*  3*/         int x = 100;
/*  4*/         x = x + 1; // 1増加
/*  5*/         System.out.println(x);
/*  6*/     }
/*  7*/ }

24102a1:java1 k12x1001$ java IncreaseTest
Picked up JAVA_TOOL_OPTIONS: -Dfile.encoding=UTF-8
101
24102a1:java1 k12x1001$

このプログラムは、いったん変数 x にデータ100を格納した後、それを1増加させるものです。 4行目は、変数 x に、変数 x の値に1を足したものを格納する代入文です。 x と x ＋1が等しいと言っているわけではありません。このイメージは次の図のようになります。

変数の値の増加

変数の値を1増加させることはよく行われるので、省略形が用意されています。

x = x + 1;

の場合なら、

x++;

と書けます。変数 y の値を1減少させる、

y = y - 1;

という代入文も、

y--;

と省略できます。

1増加や1減少させるのでなく、いくらか増加やいくらか減少させるための省略形もあります。以下の表を参照してください。

代入文の省略形

代入文	省略形
`変数` `=` `変数` `+` `式` `;`	`変数` `+=` `式` `;`
`変数` `=` `変数` `-` `式` `;`	`変数` `-=` `式` `;`
`変数` `=` `変数` `*` `式` `;`	`変数` `*=` `式` `;`
`変数` `=` `変数` `/` `式` `;`	`変数` `/=` `式` `;`
`変数` `=` `変数` `%` `式` `;`	`変数` `%=` `式` `;`

以下のプログラムでは、変数 x の値を10増加させて、1増加させています。

/*  1*/ class IncreaseTest2 { // 増加のテスト2
/*  2*/     public static void main (String[] args) {
/*  3*/         int x = 100;
/*  4*/         System.out.println(x);
/*  5*/         x += 10; // 10増加
/*  6*/         System.out.println(x);
/*  7*/         x++; // 1増加
/*  8*/         System.out.println(x);
/*  9*/     }
/* 10*/ }

24102a1:java1 k12x1001$ java IncreaseTest2
Picked up JAVA_TOOL_OPTIONS: -Dfile.encoding=UTF-8
100
110
111
24102a1:java1 k12x1001$

繰返し文（1）

while文

前回の授業では、条件文というものを使って、プログラムを作成しました。今日は、 繰返し文 （ repetitive statement ）、または ループ文 （ loop statement ）と呼ばれるものを使用します。

繰返し文にはいくつか種類がありますが、「何々が成り立つ間、何々を繰り返す」というものが基本です。この種の繰返し文には while文 （ while statement ）を使います。 while文は以下の形をとります。

while (条件) {
    文; ...
}

これで、「 条件 」が成り立っている間、「 文 」、...が繰り返し実行されます。

while文の流れ

ここで、OKと10回出力するプログラムを考えます。もちろん、

        System.out.println("OK");
        System.out.println("OK");
        System.out.println("OK");
        ...
        System.out.println("OK");

と書けば10回出力できますが、これと同じことをwhile文で表すわけです。

はじめは数え上げ方式です。これは、すでに繰り返した回数を覚えておく方法です。つまり、変数 i に0を代入しておき、OKと一回出力するごとに i の値を1増やすということを、 i の値が10未満の間繰り返します。

/*  1*/ class TenOKs { // OK 10回
/*  2*/     public static void main (String[] args) {
/*  3*/         int i; // 繰り返した回数
/*  4*/         i = 0;
/*  5*/         while (i < 10) { // iが10未満の間繰り返す
/*  6*/             System.out.println("OK");
/*  7*/             i++;
/*  8*/         }
/*  9*/     }
/* 10*/ }

24102a1:java1 k12x1001$ java TenOKs
Picked up JAVA_TOOL_OPTIONS: -Dfile.encoding=UTF-8
OK
OK
OK
OK
OK
OK
OK
OK
OK
OK
24102a1:java1 k12x1001$

5行目から8行目までのwhile文は次のように実行されます。

1. 変数 i の値は0。条件 i ＜10が成り立つので、OKと出力し、 i の値を1増やす。
2. 変数 i の値は1。条件 i ＜10が成り立つので、OKと出力し、 i の値を1増やす。
...
10. 変数 i の値は9。条件 i ＜10が成り立つので、OKと出力し、 i の値を1増やす。
11. 変数 i の値は10。条件 i ＜10は成り立たないので、このwhile文の実行を終える。

次はカウントダウン方式です。これは、これから繰り返す回数を覚えておく方法です。つまり、変数 i に10を代入しておき、OKと一回出力するごとに i の値を1減らすということを、 i の値が正の数の間繰り返します。

/*  1*/ class TenOKs2 { // OK 10回2
/*  2*/     public static void main (String[] args) {
/*  3*/         int i; // 繰り返す回数
/*  4*/         i = 10;
/*  5*/         while (i > 0) { // iが正の数の間繰り返す 
/*  6*/             System.out.println("OK");
/*  7*/             i--;
/*  8*/         }
/*  9*/     }
/* 10*/ }

5行目から8行目までのwhile文は次のように実行されます。

1. 変数 i の値は10。条件 i ＞0が成り立つので、OKと出力し、 i の値を1減らす。
2. 変数 i の値は9。条件 i ＞0が成り立つので、OKと出力し、 i の値を1減らす。
...
10. 変数 i の値は1。条件 i ＞0が成り立つので、OKと出力し、 i の値を1減らす。
11. 変数 i の値は0。条件 i ＞0は成り立たないので、このwhile文の実行を終える。

数え上げ方式とカウントダウン方式のどちらがよいかは、問題によって変わります。数え上げ方式のほうがよく使われますが、カウントダウン方式が適切な場合もあります。

さて、上記のプログラムで、7行目を書き忘れたとしましょう。

/*  1*/ class InfiniteOKs { // OK無限回
/*  2*/     public static void main (String[] args) {
/*  3*/         int i;
/*  4*/         i = 10;
/*  5*/         while (i > 0) { // 永遠に条件が成立
/*  6*/             System.out.println("OK");
/*  7*/             // i--;
/*  8*/         }
/*  9*/     }
/* 10*/ }

このプログラムを実行すると、変数 i の値は10のままです。したがって、条件 i ＞0がずっと成り立ち、永遠にOKと出力され続けることになります。

このような、いつまでも続く繰り返しを、 無限ループ （ infinite loop ）とよびます。繰返し文を使うときは、無限ループにならないように気をつける必要があります。なお、誤って無限ループに陥ったときは、Ctrl-C（controlキーとCキーを同時に押す）で強制終了してください。

無限ループ

また、繰り返しの回数を0にすると、0回繰り返す、つまり、一度も実行されなくなります。

/*  1*/ class NoOKs { // OK 0回
/*  2*/     public static void main (String[] args) {
/*  3*/         int i;
/*  4*/         i = 0;
/*  5*/         while (i < 0) { // 最初から条件が不成立
/*  6*/             System.out.println("OK");
/*  7*/             i++;
/*  8*/         }
/*  9*/     }
/* 10*/ }

このプログラムを実行すると、条件 i ＜0は初めから成り立たないので、何も出力されないのです。

一度も実行されないループ

for文

繰返し文の中には、繰り返す回数が明確なものがあります。この場合、 ループ制御変数 （ loop control variable ）とよばれる変数を増加（あるいは減少）させながら繰り返すのが一般的です。 for文 （ for statement ）を用いると、このような繰返し文をコンパクトに書き表すことができます。 for文は次のような形をとります。

for (変数初期化; 条件; 変数更新) {
    文; ...
}

これで、まず「 変数初期化 」が一度だけ実行されます。そして「 条件 」が成り立っている間、「 文 」、...と「 変数更新 」が繰り返し実行されます。

while文を使ってこのfor文を書くと、次のようになります。

変数初期化;
while (条件) {
    文; ...
    変数更新;
}

for文を用いると、OKと10回出力するプログラムは次のように書けます。数え上げ方式については、

/*  1*/ class TenOKs3 { // OK 10回3
/*  2*/     public static void main (String[] args) {
/*  3*/         int i; // ループ制御変数
/*  4*/         for (i = 0; i < 10; i++) { // 10回繰り返す
/*  5*/             System.out.println("OK");
/*  6*/         }
/*  7*/     }
/*  8*/ }

です。カウントダウン方式は、

/*  1*/ class TenOKs4 { // OK 10回4
/*  2*/     public static void main (String[] args) {
/*  3*/         int i; // ループ制御変数
/*  4*/         for (i = 10; i > 0; i--) { // 10回繰り返す
/*  5*/             System.out.println("OK");
/*  6*/         }
/*  7*/     }
/*  8*/ }

となります。

while文とfor文には本質的な差はありません。繰返しの回数がはっきりしているときにはfor文、そうでないときにはwhile文を使うのがよいでしょう。

ループ制御変数は、整数型にしてください。実数型にすると、誤差の影響で、繰り返しの回数を間違える可能性があります。

/*  1*/ class ForIntTest { // for文で整数を使うテスト
/*  2*/     public static void main (String[] args) {
/*  3*/         int i; // 整数型
/*  4*/         for (i = 0; i < 10; i++) { // 10 回繰り返す
/*  5*/             System.out.println(i);
/*  6*/         }
/*  7*/     }
/*  8*/ }

24102a1:java1 k12x1001$ java ForIntTest
Picked up JAVA_TOOL_OPTIONS: -Dfile.encoding=UTF-8
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
24102a1:java1 k12x1001$

/*  1*/ class ForDoubleTest { // for文で実数を使うテスト
/*  2*/     public static void main (String[] args) {
/*  3*/         double d; // 実数型
/*  4*/         for (d = 0.0; d < 1.0; d += 0.1) { // 11回繰り返してしまう
/*  5*/             System.out.println(d);
/*  6*/         }
/*  7*/     }
/*  8*/ }

24102a1:java1 k12x1001$ java ForDoubleTest
Picked up JAVA_TOOL_OPTIONS: -Dfile.encoding=UTF-8
0.0
0.1
0.2
0.30000000000000004
0.4
0.5
0.6
0.7
0.7999999999999999
0.8999999999999999
0.9999999999999999
24102a1:java1 k12x1001$

なお、ループ制御変数は、 i , j , k などを使うのが一般的です。変数名 i は、整数（integer）から来ているようです。

繰返し文の使用例（1）

繰返し文の使用例として、はじめに1＋2＋...＋100の計算を行います。

この問題は、レジの計算をまねることで解決できます。つまり、それまでの合計を表す変数 sum を用意して、初期値を0とします。そして、 sum の値を 1増やし、2増やし、…と繰り返し、100増やした時点の sum の値が答になるわけです。したがって、

        sum += 1;
        sum += 2;
        ...
        sum += 100;

と同じことをfor文で表します。

プログラムは次の通りです。

/*  1*/ class Summation100 { // 合計100
/*  2*/     public static void main (String[] args) {
/*  3*/         int i, sum = 0;
/*  4*/         for (i = 1; i <= 100; i++) { // 100回繰り返す
/*  5*/             sum += i;
/*  6*/         }
/*  7*/         System.out.println(sum);
/*  8*/     }
/*  9*/ }

24102a1:java1 k12x1001$ java Summation100
Picked up JAVA_TOOL_OPTIONS: -Dfile.encoding=UTF-8
5050
24102a1:java1 k12x1001$

次の例では、1×2×…×10の計算を行います。

合計の計算と同じように考え、変数 product の値を1倍し、2倍し、…と繰り返し、10倍すれば計算できます。したがって、

        product *= 1;
        product *= 2;
        ...
        product *= 10;

と同じことをfor文で表します。ただし、 product の初期値は1とします。

プログラムは次の通りです。

/*  1*/ class Product10 { // 積10
/*  2*/     public static void main (String[] args) {
/*  3*/         int i, product = 1;
/*  4*/         for (i = 1; i <= 10; i++) { // 10回繰り返す
/*  5*/             product *= i;
/*  6*/         }
/*  7*/         System.out.println(product);
/*  8*/     }
/*  9*/ }

24102a1:java1 k12x1001$ java Product10
Picked up JAVA_TOOL_OPTIONS: -Dfile.encoding=UTF-8
3628800
24102a1:java1 k12x1001$

アプレットの例として、長方形を描きます。

以前、次のような図形を描きました。

/*  1*/ import java.applet.*;
/*  2*/ import java.awt.*;
/*  3*/ 
/*  4*/ public class AppletTest extends Applet {
/*  5*/     public void paint (Graphics g) {
/*  6*/         g.setColor(Color.black);
/*  7*/         g.fillRect(20, 40, 60, 80);
/*  8*/     }
/*  9*/ }

黒い長方形

この図形の座標

塗り潰した長方形を描くために、 g.fillRect( ... ); を使っています。ここではこれを用いず、自分で長方形を塗り潰すことにします。

長方形は、上から順にすきまなく水平線を引いていけば、塗り潰すことができます。この場合は、

        g.fillRect(20, 40, 60, 80);

の代わりに

        g.drawLine(20, 40, 79, 40);
        g.drawLine(20, 41, 79, 41);
        g.drawLine(20, 42, 79, 42);
        ...
        g.drawLine(20, 119, 79, 119);

と同じことを実行すればよいわけです。（ g.drawLine(20, 40, 80, 40); から g.drawLine(20, 120, 80, 120); までだと、幅61ピクセル、高さ81ピクセルになります。）

プログラムは次の通りです。

/*  1*/ import java.applet.*;
/*  2*/ import java.awt.*;
/*  3*/
/*  4*/ public class FillRect extends Applet { // 塗り潰した長方形
/*  5*/     public void paint (Graphics g) {
/*  6*/         int i;
/*  7*/         for (i = 0; i < 80; i++) { // 80回繰り返す
/*  8*/             g.drawLine(20, 40 + i, 79, 40 + i);
/*  9*/         }
/* 10*/     }
/* 11*/ }

この方法を応用すると、色々な図形が描けるようになります。例えば、次のような直角三角形を考えます。

直角三角形

この図形は、

        g.drawLine(50, 50, 51, 50);
        g.drawLine(50, 51, 53, 51);
        g.drawLine(50, 52, 55, 52);
        ...
        g.drawLine(50, 149, 249, 149);

と同じことを実行すれば描けます。

プログラムは次の通りです。

/*  1*/ import java.applet.*;
/*  2*/ import java.awt.*;
/*  3*/
/*  4*/ public class RightTriangle extends Applet { // 直角三角形
/*  5*/     public void paint (Graphics g) {
/*  6*/         int i;
/*  7*/         for (i = 0; i < 100; i++) { // 100回繰り返す
/*  8*/             g.drawLine(50, 50 + i, 51 + 2 * i, 50 + i);
/*  9*/         }
/* 10*/     }
/* 11*/ }

演習7

以下の二等辺三角形をfor文を用いて描きます。

二等辺三角形（IsoscelesTriangle）

この図形は、

        g.drawLine(149, 50, 150, 50);
        g.drawLine(148, 51, 151, 51);
        g.drawLine(147, 52, 152, 52);
        ...
        g.drawLine(50, 149, 249, 149);

と同じことを実行すれば描けます。この描き方に基づいて、プログラムを作成してください。

余力のある人は、平行四辺形、ひし形など、自分で考えた図形をfor文を用いて描いてください。座標が実数になる場合は、 (int) を左に書いて整数化すると、うまくいきます。

レポート課題

今日の演習7の答案（Javaプログラム）をメールで提出してください。差出人は学内のメール・アドレス（k12x1001@cis.twcu.ac.jpなど）とし、宛先はkonishi@cis.twcu.ac.jpとします。メールの本文には、学生番号、氏名、科目名、授業日（11月15日）を明記してください。

参考文献

Java SE Specifications
http://docs.oracle.com/javase/specs/
概要（Java Platform SE 6）
http://docs.oracle.com/javase/jp/6/api/
概要（Java Platform SE 7）
http://docs.oracle.com/javase/jp/7/api/
Javaチュートリアル
http://docs.oracle.com/cd/E26537_01/tutorial/

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