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コンピュータIIB(Javaプログラミング入門)第10回

目次
10.1 データ型
10.1.1 データ型とは
10.1.2 整数と浮動小数点数
10.1.3 真理値とブール式
10.1.4 文字
10.2 他のクラスのメソッド
10.3 インスタンスメソッド
10.3.1 インスタンスメソッドとは
10.3.2 メッセージ受渡しモデル
10.3.3 インスタンスメソッドの使用例
10.4 演習10
10.5 レポート課題
10.6 参考文献
索引
ASCII   Unicode   基本データ型   参照データ型   真理値   データ型   バイト   ビット   ブール式   浮動小数点数   メッセージ受渡しモデル   文字符号   論理型  

10.1 データ型

10.1.1 データ型とは

データ型data type ) とは、データの種類のことです。 これまでに、整数、配列、およびクラスの3種類のデータ型を扱ってきました。 Java言語には、この他のデータ型も用意されています。

Java言語のデータ型は、まず基本データ型と参照データ型の2つに大きく分類されます。 基本データ型primitive data type ) には、整数型、浮動小数点数型、論理型、および文字型があります。 参照データ型reference data type ) には、クラス型と配列型があります。 以下は基本データ型の詳細です。

表 10.1  Java言語の基本データ型
種類 型名 ビット 説明
整数型 byte 8 -27(-128)〜27- 1(127)
整数型 short 16 -215(-32768)〜215- 1(32767)
整数型 int 32 -231〜231- 1(9桁程度)
整数型 long 64 -263〜263- 1(18桁程度)
浮動小数点数型 float 32 指数+38〜-45, 有効桁数7桁程度
浮動小数点数型 double 64 指数+308〜-324, 有効桁数14桁程度
論理型 boolean - trueまたはfalse
文字型 char 16 \u0000(0)〜\uFFFF(65535)

コンピュータのデータの単位は ビットbit ) であることを思い出してください。 ただし、これは理論上の話です。 現実のコンピュータ・システムは、 バイトbyte ) を単位としています。 1バイトは8ビットです。 基本データ型が8ビット単位であるのは、ここに理由があります。

10.1.2 整数と浮動小数点数

整数を扱う場合、普通は int 型を用います。 ただし、 int 型は9桁程度が限界であり、これを超えますと意味のない計算をしてしまいます。 int 型の範囲を超えるような大きい数を扱うときに、 long 型を用います。

浮動小数点数floating point number ) とは、小数点をずらすことによって、非常に大きな数や非常に小さな数も表現できるようにした小数のことです。 浮動小数点数を扱う場合、普通は double 型を用います。 限られたビット数で表現する以上、小数点をずらす桁数には限度がありますし、小数の精度にも限界があります。

10.1.3 真理値とブール式

論理型logical type ) とは、真理値を表わすデータ型です。 ここで 真理値truth value ) とは、真を表す記号 true と偽を表す記号 false のことだと思ってください。 Java では、型名 boolean で論理型を表わします。 値が論理型である式を、 ブール式Boolean expression ) とよびます。 これまで「条件が成り立つ」、「条件が成り立たない」と言ってきたことは、正確にはブール式の値が true になること、false になることです。

10.1.4 文字

Javaは、文字( char 型)を1バイトではなく2バイトで表現します。 これは、英数字だけではなく、漢字なども文字として扱おうという設計です。 なお、ちょうど1バイトで表現されるデータ型として、バイト( byte )が用意されています。

文字は、内部では整数として処理されます。 この、文字から整数への対応を 文字符号character code ) と呼びます。 Javaの採用している文字符号は、 Unicode と呼ばれる体系です。 Unicodeは ASCII という体系の拡張になっています。 主な文字のASCII符号は次の通りです。

表 10.2  主な文字のASCII符号
制御文字 水平タブ 改行 復帰 スペース
表示 '\t' '\n' '\r' ' '
符号 9 10 13 32
文字 ! " # $ % & ' ( ) * + , - . /
符号 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47
文字 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 : ; < = > ?
符号 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63
文字 @ A B C D E F G H I J K L M N O
符号 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79
文字 P Q R S T U V W X Y Z [ \ ] ^ _
符号 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95
文字 ` a b c d e f g h i j k l m n o
符号 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111
文字 p q r s t u v w x y z { | } ~
符号 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126

プログラムの中で文字を表す場合、その文字をシングルクオート( ' )で囲みます。 ただし、シングルクオート自身、およびダブルクオート( " )、バックスラッシュ( \ )については、それぞれ '\'' , '\"' , '\\' とします。


10.2 他のクラスのメソッド

前回、以下のようなプログラムを紹介しました。

Time.java
/*  1*/ class Time {
/*  2*/     int hour, minute;
/*  3*/ }
TimeTest5.java
/*  1*/ class TimeTest5 {
/*  2*/     public static void main (String[] args) {
/*  3*/         Time x = new Time();
/*  4*/         setHour(x, 14);
/*  5*/         setMinute(x, 45);
/*  6*/         System.out.println(getHour(x) + ":" + getMinute(x));
/*  7*/         setMinute(x, 30);
/*  8*/         System.out.println(getHour(x) + ":" + getMinute(x));
/*  9*/     }
/* 10*/     static int getHour (Time t) {
/* 11*/         return t.hour;
/* 12*/     }
/* 13*/     static int getMinute (Time t) {
/* 14*/         return t.minute;
/* 15*/     }
/* 16*/     static void setHour (Time t, int hour) {
/* 17*/         t.hour = hour;
/* 18*/     }
/* 19*/     static void setMinute (Time t, int minute) {
/* 20*/         t.minute = minute;
/* 21*/     }
/* 22*/ }
b04a001@AsiaA1:~/comp2b% java TimeTest5
14:45
14:30
b04a001@AsiaA1:~/comp2b%

ファイルTime.javaではクラスの定義を行い、ファイルTimeTest5.javaでは実行プログラムとメソッドの定義を行っています。 次のようにしますと、クラス定義とメソッド定義を一つにまとめることができます。

Time.java(第2版)
/*  1*/ class Time {
/*  2*/     int hour, minute;
/*  3*/     static int getHour (Time t) {
/*  4*/         return t.hour;
/*  5*/     }
/*  6*/     static int getMinute (Time t) {
/*  7*/         return t.minute;
/*  8*/     }
/*  9*/     static void setHour (Time t, int hour) {
/* 10*/         t.hour = hour;
/* 11*/     }
/* 12*/     static void setMinute (Time t, int minute) {
/* 13*/         t.minute = minute;
/* 14*/     }
/* 15*/ }
TimeTest5.java(第2版)
/*  1*/ class TimeTest5 {
/*  2*/     public static void main (String[] args) {
/*  3*/         Time x = new Time();
/*  4*/         Time.setHour(x, 14);
/*  5*/         Time.setMinute(x, 45);
/*  6*/         System.out.println(Time.getHour(x) + ":" + Time.getMinute(x));
/*  7*/         Time.setMinute(x, 30);
/*  8*/         System.out.println(Time.getHour(x) + ":" + Time.getMinute(x));
/*  9*/     }
/* 10*/ }

メソッド定義の形は同じですが、メソッド呼出しの形は変わります。 値を返さないメソッドを呼び出すには、文

classname.methodname(argument, ...);

を用います。 ここで classname は、メソッドが定義されているクラスの名前です。 値を返すメソッドを呼び出すには、式

classname.methodname(argument, ...)

を用います。


10.3 インスタンスメソッド

10.3.1 インスタンスメソッドとは

以前、メソッドにはインスタンスメソッドとクラスメソッドがあると言いました。 これまではクラスメソッドのみを使ってきましたが、Javaらしいプログラムではインスタンスメソッドのほうがよく用いられます。 クラスメソッドと比較しながら、インスタンスメソッドについて説明します。

上記のプログラムを、インスタンスメソッドを用いて書きなおしますと、次のようになります。

Time.java(第3版)
/*  1*/ class Time {
/*  2*/    int hour, minute;
/*  3*/    int getHour () {
/*  4*/       return this.hour;
/*  5*/    }
/*  6*/    int getMinute () {
/*  7*/       return this.minute;
/*  8*/    }
/*  9*/    void setHour (int hour) {
/* 10*/       this.hour = hour;
/* 11*/    }
/* 12*/    void setMinute (int minute) {
/* 13*/       this.minute = minute;
/* 14*/    }
/* 15*/ }
TimeTest5.java(第3版)
/*  1*/ class TimeTest5 {
/*  2*/    public static void main (String[] args) {
/*  3*/       Time x = new Time();
/*  4*/       x.setHour(14);
/*  5*/       x.setMinute(45);
/*  6*/       System.out.println(x.getHour() + ":" + x.getMinute());
/*  7*/       x.setMinute(30);
/*  8*/       System.out.println(x.getHour() + ":" + x.getMinute());
/*  9*/    }
/* 10*/ }

まず、メソッド定義を実行プログラム( main )には並べて書かず、フィールド定義に並べて書きます。 レコード型としてのクラスはフィールドとコンストラクタを定義しますが、一般のクラスはさらにメソッドも定義します。 メソッドは、実行プログラムよりもデータ(インスタンス)に強く結び付くと考えます。

次に、キーワード static を取り除きます。 メソッド定義で static と書くとクラスメソッド、書かないとインスタンスメソッドになります。

メソッド呼出しの形も変えます。 値を返さないインスタンスメソッドを呼び出すには、文

instance.methodname(argument, ...);

を用います。 ここで instance は、インスタンスを値とする式です。 例えば、インスタンス(への参照)が格納された変数などです。 値を返すインスタンスメソッドを呼び出すには、式

instance.methodname(argument, ...)

を用います。 なお、括弧がなければインスタンスのフィールドにアクセスする形になります。

この式 instance は、メソッド呼出しの実引数としての役割を果たします。 この実引数に対応する仮引数は、メソッド定義でのキーワード this です。 メソッド呼出しの際、 this にはインスタンス instance への参照がコピーされます。

10.3.2 メッセージ受渡しモデル

インスタンスメソッドとは、引数の中からインスタンスを一つ選び、それを特別扱いしたものと考えてください。 特別扱いされたインスタンスは、実引数としては、括弧の中ではなく、メソッド名の左に書かれます。 仮引数としては、括弧の中では定義されず、キーワード this で表されます。

この、引数の一つのインスタンスを特別扱いすることは、 メッセージ受渡しモデルmessage-passing model ) に基づいています。 これは、データ(インスタンス)がメッセージを受け取ると、それに応じて操作(メソッド)が引き起こされるという考え方です。 Javaでのメッセージは、メソッド名のことだと思ってください。 インスタンスにメッセージを送りますと、そのインスタンスのクラスで定義されたメソッドが起動されるということです。 メッセージ受渡しモデルに従いますと、上記のメソッド呼出しは、インスタンス instance にメッセージ methodname ( argument , ... ) を送ることに相当します。

インスタンスメソッドにできて、クラスメソッドにできないことのひとつに、メソッド定義で this を用いることがあげられます。 this は、インスタンスメソッドの呼出しのときにメッセージを受け取ったインスタンスを指します。 クラスメソッドでは、メッセージを受け取るインスタンスが存在しませんので、 this が使えないのです。

10.3.3 インスタンスメソッドの使用例

インスタンスメソッドの例として、次の問題を考えます。

あるサークルでは、男性5人と女性4人が入会しましたが、その後、男性1人と女性2人が退会しました。 結局、このサークルは、男女合わせて何人になったでしょうか。

この問題を、インスタンスメソッドを用いて解決します。

ファイルMember.javaでは、男性と女性の会員数を格納するために、クラス Member を定義します。 フィールド male には男性会員数を、 female には女性会員数を格納します。 コンストラクタも定義します。

Member.java
/*  1*/ class Member {
/*  2*/     int male, female;
/*  3*/     Member (int male, int female) {
/*  4*/         this.male = male;
/*  5*/         this.female = female;
/*  6*/     }
/*  7*/ }

メソッドを用いない場合、プログラムは次のようになります。

MemberMain.java
/*  1*/ class MemberMain {
/*  2*/     public static void main (String[] args) {
/*  3*/         Member member = new Member(0, 0);
/*  4*/         member.male = member.male + 5;
/*  5*/         member.female = member.female + 4;
/*  6*/         member.male = member.male - 1;
/*  7*/         member.female = member.female - 2;
/*  8*/         System.out.println(member.male + member.female);
/*  9*/     }
/* 10*/ }
b04a001@AsiaA1:~/comp2b% java MemberMain
6
b04a001@AsiaA1:~/comp2b%

このプログラムでもだいたいは分かりますが、「男性が入会した」とか「女性が退会した」といったメソッドを定義して呼び出したほうが、より分かりやすくなります。

インスタンスメソッドを用いますと、次のようになります。

ファイルMember.javaでは、メソッド joinMale を定義します。 このメソッドは、男性会員数を入会人数だけ増加させるものです。 このメソッドの引数は入会人数を表す persons です。 このメソッドは値を返しませんので、 void と指定します。

ファイルMember.javaでは、メソッド joinFemale を定義します。 このメソッドは、女性会員数を入会人数だけ増加させるものです。 このメソッドの引数は入会人数を表す persons です。 このメソッドは値を返しませんので、 void と指定します。

ファイルMember.javaでは、メソッド leaveMale を定義します。 このメソッドは、男性会員数を退会人数だけ減少させるものです。 このメソッドの引数は退会人数を表す persons です。 このメソッドは値を返しませんので、 void と指定します。

ファイルMember.javaでは、メソッド leaveFemale を定義します。 このメソッドは、女性会員数を退会人数だけ減少させるものです。 このメソッドの引数は退会人数を表す persons です。 このメソッドは値を返しませんので、 void と指定します。

ファイルMember.javaでは、メソッド getNumber を定義します。 このメソッドは、男女合わせた人数を計算するものです。 このメソッドに引数はありません。 このメソッドは整数( int 型)を返しますので、 int と指定します。

Member.java(第2版)
/*  1*/ class Member {
/*  2*/     int male, female;
/*  3*/     Member (int male, int female) {
/*  4*/         this.male = male;
/*  5*/         this.female = female;
/*  6*/     }
/*  7*/     void joinMale (int persons) {
/*  8*/         this.male = this.male + persons;
/*  9*/     }
/* 10*/     void joinFemale (int persons) {
/* 11*/         this.female = this.female + persons;
/* 12*/     }
/* 13*/     void leaveMale (int persons) {
/* 14*/         this.male = this.male - persons;
/* 15*/     }
/* 16*/     void leaveFemale (int persons) {
/* 17*/         this.female = this.female - persons;
/* 18*/     }
/* 19*/     int getNumber () {
/* 20*/         return this.male + this.female;
/* 21*/     }
/* 22*/ }

ファイルMemberMain.javaでは、定義したインスタンスメソッドを呼び出して、人数計算を行います。 これらのメソッド呼出しをメッセージ受渡しモデルで考えますと、例えば文 member.joinMale(5) は、インスタンス member に、「男性が入会した」というメッセージ joinMale を送るという意味です。

MemberMain.java(第2版)
/*  1*/ class MemberMain {
/*  2*/     public static void main (String[] args) {
/*  3*/         Member member = new Member(0, 0);
/*  4*/         member.joinMale(5);
/*  5*/         member.joinFemale(4);
/*  6*/         member.leaveMale(1);
/*  7*/         member.leaveFemale(2);
/*  8*/         System.out.println(member.getNumber());
/*  9*/     }
/* 10*/ }

10.4 演習10

あるスポーツの試合で、あるチームが6点得点し、4点失点し、5点失点し、2点得点したとします。 このチームが何点勝っているかを計算するプログラムを作成してください。

ファイルMatch.javaでは、総得点と総失点を格納するために、クラス Match を定義します。 フィールド winning には総得点を、 lost には総失点を格納します。 コンストラクタは、引数が winning , lost の順になるように定義します。

ファイルMatch.javaでは、インスタンスメソッド win を定義します。 これは、総得点を引数の点数だけ増加させるものです。 このメソッドの引数は、点数を表す point です。 このメソッドは値を返しませんので、 void と指定します。

ファイルMatch.javaでは、インスタンスメソッド lose を定義します。 これは、総失点を引数の得点だけ増加させるものです。 このメソッドの引数は、点数を表す point です。 このメソッドは値を返しませんので、 void と指定します。

ファイルMatch.javaでは、インスタンスメソッド getDifference を定義します。 これは、点差(総得点−総失点)を計算するものです。 このメソッドに引数はありません。 このメソッドは整数( int 型)を返しますので、 int と指定します。

そして、ファイルMatchMain.javaでは、次のようにインスタンスメソッドを呼び出して、得点計算を行います。

Match match = new Match(0, 0);
match.win(6);
match.lose(4);
match.lose(5);
match.win(2);
System.out.println("The difference is " + match.getDifference());
b04a001@AsiaA1:~/comp2b% java MatchMain
The difference is -1
b04a001@AsiaA1:~/comp2b%

余力のある人は、ファイルMatch.javaでインスタンスメソッド getWinninggetLost を定義して、それぞれ総得点と総失点を返すようにしてください。 そして、ファイルMatchMain.javaでそれらのインスタンスメソッドを呼び出し、総得点、総失点、点差を画面出力してください。

b04a001@AsiaA1:~/comp2b% java MatchMain
The winning is 8
The lost is 9
The difference is -1
b04a001@AsiaA1:~/comp2b%

10.5 レポート課題

今日の演習10の答案(Javaプログラム)をメールで提出してください。 差出人は学内のメール・アドレス(b04a001@twcu.ac.jpなど)とし、宛先はkonishi@twcu.ac.jpとします。 メールの本文には、学生番号、氏名、科目名、授業日(6月29日)を明記してください。


10.6 参考文献


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2007年6月29日更新
小西 善二郎 <konishi@twcu.ac.jp>
Copyright (C) 2007 Zenjiro Konishi. All rights reserved.