第74回月例ロービジョン研究会
鈴木理子・小田浩一, 2005/2/22
1. 概要
1.1 本日のスペシャル
タイムズコーポレーションの山口さんから、
Sound Foresightの
ウルトラケーン(Ultra Cane)
という超音波白杖のデモ機が送られて来ました。参加者は、10万円の価格は高いとか、
重いという感想を漏らしていました(重さを実測してみると、通常の白杖は200g程度、
このウルトラケーンは、500gでした。総重要はバランスを分散されていますが、
200gの杖でも握力のないユーザでは路面の状況によっては扱いにくいという報告がある
(金平)ので、握力の少ないユーザにはちょっと厳しい重さかもしれません)

1.2 概要
下記の要領で開催されました。
- 日 時:2005年2月19日 (土) 13:00 -18:00
- 場 所:国立身体障害者リハビリセンター学院
- 参加者:(敬称略五十音順)
- 内野大介@国立身体障害者リハビリテーションセンター学院
- 小田浩一@東京女子大学
- 金本梓@国立身体障害者リハビリテーションセンター学院
- 金平景介@国立身体障害者リハビリテーションセンター学院
- 小島嘉之@国立身体障害者リハビリテーションセンター学院
- 小林章@国立身体障害者リハビリテーションセンター学院
- 最所祐二@松下電工株式会社デザイン部「新」都市生活開発グループ
- 末成智子@国立身体障害者リハビリテーションセンター学院
- 鈴木理子@東京女子大学大学院
- 田中さおり@国立身体障害者リハビリテーションセンター学院
- 道面由利香@東京都盲人福祉協会
- 信末裕子@国立身体障害者リハビリテーションセンター学院
- 松野吉泰@国立身体障害者リハビリテーションセンター学院
2. プログラム
今回は鈴木理子による概要説明が付いています.
- 小島嘉之@国立身体障害者リハビリテーションセンター学院
「手引き時の急停止に関する一考察〜身長差がない支援者の肘上または方に手を置いたとき〜」
手引きの途中で急停止する課題を行った調査の結果、急停止時には、肘上を握る基本姿勢の手引きよりも方に手を置く変形姿勢の方が余裕をもって立ち止まれることがわかった。
- 松野吉泰@国立身体障害者リハビリテーションセンター学院
「ロービジョン者のスクリーンリーダーの有効性について」
視野が制限されている場合の読書について黙読と音読の読書速度をはかり、スクリーンリーダーの音声速度と比較した。その結果、視野内文字数が3文字以下になるとスクリーンリーダーを利用した方がより速く読書できる可能性があることがわかったが、速度だけでなく、疲労度や嗜好、理解度などを考慮した上での選択が望まれるだろう。
- 金平景介@国立身体障害者リハビリテーションセンター学院
「全盲者の白杖歩行に及ぼす路面の影響について〜ノーマルチップ・マシュマロチップ・ローラーチップの違い〜」
4種類の路面環境下でCCTで歩行する際に、歩行時間、ひっかかりの回数、内省調査について検討し、どの石突きが有効か検討した。アスファルト面ではマシュマロチップ、摩擦抵抗の少ない路面ではノーマルチップ、砂利面とデザインタイル路面ではローラーチップが有効であることがわかった。
- 内野大介@国立身体障害者リハビリテーションセンター学院
「ロービジョン者の夜間歩行における高輝度白線の有効性について」
ロービジョン者が夜間に白線を見ながら歩行する際、照度の高い懐中電灯を所持することが考えられるが、今回の実験より、白線が高い輝度を持てば比較的安価な懐中電灯でもよい歩行パフォーマンスを得られることがわかった。また、視力低下に加えて求心性視野狭窄も併せもつ場合も高輝度白線が有効だが、白線付近にある障害物の発見と回避には白杖所持が有効と思われる。
coffee break
- 田中さおり@国立身体障害者リハビリテーションセンター学院
「中途視覚障害者の点字触読導入期における教材の提示についてーいわゆる垂直水平運動の獲得のためにー」
点字触読学習導入期においては、文字認知のひとつのてがかりとしてとして1の点の有無に焦点をあてた。実験結果より、「1の点のある文字」のほうが「1の点のない文字」よりも読み時間が短い傾向がでたが、誤読数においては1の点の有無の影響は必ずしもみられなかった。触運動と誤読の問題は分けて考えるべきだが、1の点がある文字からの導入は有効だろう。
- 金本梓@国立身体障害者リハビリテーションセンター学院
「ロービジョン者の街頭を手掛かりとした夜間歩行ー視野・視力・街頭条件による歩行パフォーマンスの変化についてー」
網膜感度が低下したろービジョン者が、夜間に街頭を見ながら歩行するとき、視野・視力の値、街頭の明るさなどの歩行環境が異なることにより歩行パフォーマンスの変化をみる実験を行った。その結果、視野が狭くなるほど、歩行パフォーマンスは低下した。また、視野が5度以上で視力が0.1以上あるロービジョン者にとって、街頭を手掛かりに直線歩行をすることは効率的な手段であるといえたが、視野が1度以下で視力が0.04以下の場合には難しいという結果になった。
coffee break
- 鈴木理子@東京女子大学大学院
「同時に見える文字数が読書成績に与える影響」
ウィンドウサイズと提示速度を変えながらMNREAD-Jを音読させ、読書成績を比較した。かなと漢字に読み間違いに差がなく、誤読の生じる位置にも依存していないことから、読み間違いはランダムに生じていることがうかがわれ、実測値と予測値から、確率加算的に起きていることがわかった。
今後の展開について
- 信末裕子@国立身体障害者リハビリテーションセンター学院
「視覚障害者(全盲者)のマニキュアの塗り方」
視覚障害者がマニキュアを塗るのは困難だといわれる。練習の有無に分けた実験の結果、練習効果によるエラー数には影響がないことがわかった。しかし、練習有りのグループの方が塗り残しエラーが少なかった。道具の選定と適切奈フィードバック、アドバイス、透明やピンクなどの目立たない色を塗るなどの配慮が指導する上で必要だ。
- 最所祐二@松下電工株式会社デザイン部「新」都市生活開発グループ
これから行う夜間サインの研究の概要紹介
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