1999/2/27第13回月例Low Vison研究会@東京女子大学 中村 仁美


東京都内における視覚障害関連機関見学報告


1. はじめに

 医療機関で、low visionサービスを行う場合、ルーペ、遮光眼鏡、CCTV等のlow vison aidsの選定や訓練だけではなく、視覚障害リハビリテーション施設、サークル、ボランティアグループの紹介など、社会資源の情報提供も重要なサービスの一つであるり、多くの情報の中から、個々の患者のニーズに応じた適切な情報を提供することが大切である。そのためには、low visionサービスを行う側が、正しい情報を得、必要に応じて他機関と連絡をとる必要もある。そこで、東京都内の視覚障害関連機関で行われているサービスを知るために見学を行ったので報告を行う。今回、見学した機関は、東京都視覚障害者生活支援センター、社会福祉法人日本点字図書館、財団法人東京都地域福祉財団東京都福祉機器総合センターである。

2. 東京都視覚障害者生活支援センター(見学日:2月5日)
 身体障害者福祉法に基づく視覚障害者更生施設で、主に、中途で視覚に障害を受けた人の生活訓練を行う施設である。
 概要は以下の通りである。
・訓練形態:入所、通所
・定員:入所(30名)通所(10名)
・受講条件:
 (1)身体障害者手帳を所有している人
 (2)原則として東京都に居住がある人
 (3)15歳以上の人
但し、以下のいずれかに該当する人は受講できない。
 (1)精神病や伝染病疾患がある場合
 (2)常時、医療や看護を必要とする人
 (3)常時、特別食を必要とする人
・受講方法:措置による
・訓練開始時期:随時
・訓練期間:原則として1年以内
・訓練内容:歩行、日常生活動作、コミュニケーション(点字、墨字、カナタイプ、ワープロ、パソコンなど)、スポーツ
  1999年2月現在、入所者(定員30名)20名、通所者(定員10名)12名が訓練を受けている。指導員は、9名である。上記の訓練以外に、ボランティアとして専門家を招き、ダンス、茶道、華道、カラオケクラブや地域との交流会、ハイキング、一泊旅行などの行事も行っている。訓練の他に、地域生活支援事業として、視覚障害者や視覚リハビリテーション関係者に対し、センター内の施設の無料貸し出し、ボランティアの育成、ガイドヘルパー講習会などへの講師派遣を行っている。

3. 社会福祉法人日本点字図書館(見学日:2月12日、2月18日)
  日本点字図書館は、以下の部門からなり各々のサービスを行っている。
・出版課:点字出版図書の製版、印刷、製本
・用具課:日常生活用品の開発と販売
・点字製作課:点訳ボランティアの養成、パソコン点訳講習などの開催
・情報サービス課:図書に関するレファレンスサービス
・貸出サービス課:点字図書、録音図書の貸出
・テープ製作課:活字本からのテープ製作
 このほかに、中途視覚障害者のための点字教室、相談、パソコン通信ネットワーックにより様々な情報の提供も行っている。
 1日目に点字教室、2日目に用具課を中心に館内全体の見学を行った。点字教室は、身体障害者手帳の有無に関わらず、希望者は無料で受講出来る。初心者のクラス、書きを中心に行うクラス、読み書きを中心行うクラスに分かれている。見学を行った日は、読み書きを行うクラスであった。指導員1人とアシスタント1人に対し、約40名の受講者があった。ここの点字教室は、習いたい時にいつでも受講出来、特に制限をもうけていないため、これだけ多い人が集まるということであった。用具課では、既製の用具だけではなく、視覚障害者の個々のニーズにあった商品の発掘、開発に今後、積極的に取り組んでいくとのことであった。

4. 財団法人東京都地域福祉財団東京都福祉機器総合センター(見学日:2月20日)
 このセンターは、 東京都における福祉機器のサービスシステムの中核として設置され、福祉機器の情報提供、福祉機器の展示相談、区市町村などへの支援、民間事業者への支援を行っている。このセンターは、20階建てのビルの12階から15階にあり、福祉機器の展示ホールが13階と14階にある。展示されている福祉機器は、高齢者のための介護機器が大多数を占めているが、その一画に、視覚障害関係の機器が展示してあった。展示品は、拡大読書器(7社13機種)、ルーペ類(9社約40種類)、コンピュータ関連(6社6機種)、日常生活用品などである。ここで、注目すべき点は、多くの拡大読書器が展示されていることである。low visionの状態や使用目的によって、個々に適した拡大読書器を選択する必要がある。しかし、low visionサービスを行っているところで、多くの種類の拡大読書器を所有しているところはほとんどなく、限られ機種からの選択しか出来ないのが現状である。拡大読書器が有効なエイドであるlow visionの患者の中には、過去に拡大読書器は見たことはあるが、その時は使用してみたいとは思わず、読み書くための有効なエイドであるにもかかわらず、利用することが遅れるケースがある。その原因として、その人にとって、適切な拡大読書器でなかったり、使用方法を十分説明を受けていなかったりすることがある。医療機関で多くの種類の拡大読書器をそろえることは困難であるため、その地域のどこにどの機種の拡大読書器があるかを把握する必要がある。

5. おわりに
 
今回の見学を行い、その施設が行っているサービスの内容を具体的に知ることが出来た。直接その施設を見学しないでもパンフレットのみで、ある程度の情報を得る事は可能である。しかし、医療機関でのlow visionサービスとしての他機関の情報提供は、今後、その人や医療機関と建設的な関係を築き上げれるか重要な役割をになっている。個々のlow visionの患者が必要とする適切で情報を提供し、その人にとって提供してもらって良かったと感じ、その人が積極的に活用する情報である必要がある。そのためには、医療機関で可能な範囲で視覚障害関連機関を積極的に知ることも必要である。


If anything, e-mail to hitomin@twcu.ac.jp.