第79回月例ロービジョン研究会

鈴木理子・小田浩一, 2005/8/15

期せずしてETA特集になりました!(写真はすべて小林章さん提供)

1. 概要

下記の要領で開催しました。

  1. 日 時:2005年8月13日 (土) 13:00 -18:00
  2. 場 所:東京女子大学#9304教室
  3. 参加者:(敬称略五十音順)
    1. 阿佐宏一郎@東京大学文学部行動文化学科心理学専攻
    2. 麻野井千尋@立教大学大学院文学研究科
    3. 新井千賀子@独立行政法人国立特殊教育総合研究所
    4. 今村和彦@有限会社BAT Japan<--ゲスト
    5. 尾形真樹@杏林アイセンター/特定非営利活動法人Tokyo Lighthouse
    6. 小田浩一@東京女子大学
    7. 角田亮子@神奈川リハビリテーション病院<--初参加
    8. 鎌田貴身江@和田町眼科クリニック
    9. 河野恵美@東京女子大学大学院
    10. 小林章@国立身体障害者リハビリテーションセンター学院 (視覚障害学科1年生同伴:市瀬さおり 楠紗代子 坂田光子 長原照子)
    11. 小林巌@東京学芸大学
    12. 斎藤奈緒子@神奈川リハビリテーション病院
    13. 清水美知子@特定非営利活動法人Tokyo Lighthouse
    14. 鈴木理子@東京女子大学大学院
    15. 田中恵津子@杏林アイセンター
    16. 田中千尋@立教大学心理学科
    17. 松野吉泰@神奈川県ライトセンター
    18. 宮崎博子@東京女子大学コミュニケーション学科
    19. 森旅宇子@和田町眼科クリニック<--初参加
    20. 山口成志@タイムズコーポレーション

2. プログラム

今回は、電子移動補助具(Eletronic Travel Aids; ETA)に ついての内容の濃い研究会になりそうです。清水さんが 歴史と背景を話してくださるというので、エントリ順でなく 内容的に理解がやさしくなる順序にしました。今回紹介されている ETAは、障害物探知機と環境認知装置の両雄、Mowat Sensorと Sonic Guideの末裔にあたります。価格も共に8万円くらい。 mini guide、Ultracaneなど、久しぶりにETAの商品が沢山出て来て 視覚障害のある歩行者がどうこれらを受け入れていくのか楽しみです。

    13:00-14:00

  1. 清水美知子@特定非営利活動法人Tokyo Lighthouse
    「1970年代のETAs(Electronic Travel Aids)について」
    最新のK sonarやMowat sensorと同じ機能の小型機 パームソナーの発表に先立って、これまでのETAの経緯や 特徴、考え方や長所短所などを概観した。清水さんは、 おそらく日本人ではもっともETAを良く知っている人。K sonarは、 超音波を利用して全盲の利用者が環境認知をする機器、 パームソナーは障害物探知機である。
  2. 小林章@国立身体障害者リハビリテーションセンター学院
    「テイクスのパームソナー
    Ultracaneやminiguideは超音波の照射角度が大きいので振動が しょっちゅうあるが、パームソナーはMowat sensorと同じように 角度が狭く、障害物がないところでは振動しない。それが良いのか 悪いのかは個人の好みかもしれない。小さく持ち運んで使うのに 負担はないが、振動の意味が分からないときがある。両手が塞がるのが 難点。

    Palmsonarの写真 Palmsonarを持っている写真、100円ライターを少し大きめにしたくらいのサイズ。

  3. 14:30-15:30

  4. 今村和彦@有限会社BAT Japan
    「特別講演:K sonar

    今村さんは、100人以上Sonic guideの訓練をした経験を 持ち、Leslie Kayと長い親交がある。 K Sonarの生みの親Leslie Kay のETAの研究史、Sonic guideの実機によるデモ、 Sonic guideに中心視野に相当する解像度の高い部位を付けたTrisensor(Casper) のデモを 行い、その経緯の中でK sonarを紹介した。 Casperは、100万もして製品化できないので、技術の一部をデザイン的には 最も初期のSonic Toach的にし、白状に特殊な角度で取り付けるようにしたのがK sonarである。

    Sonic Guideの写真 Trisensorの写真 Casperの写真

    写真は左から、Sonic Guide, Trisensor, Casper.

    取り付け角度は、白杖を体の前に保持するフーバーテクニックの形でなく、 脇にだらっと持った(まるで訓練後に正しく保持できなくなってしまったような感じ)状態で センサーが正面を向くようになっている。杖につけて持ってみると、杖は重くない。 フル充電で4時間の継続使用。2mのショートレンジと5mのロングレンジがある。 照射角は比較的細いよう。解像度は非常に高い、床のちょっとしたタイルの張り合わせ部分の 隙間から戻る超音波も聞こえる。

    K SONARを白杖につけて保持した姿勢

    左から、K SONARの市販品ユニットの写真と白杖につけて保持した姿勢の写真。

  5. coffee break

    16:00-18:00

  6. 松野吉泰@神奈川県ライトセンター
    「車輪型ローラーチップ」
    ある程度視覚だけで歩けるが、ちょっとした段差や落ち込みが 目で確認できないような事例で、白杖を使う長時間の歩行訓練を 回避したがる人も少なくないように思われる。 車輪型ローラーチップの ついた白杖では、その段差や落ち込みの発見を大した訓練なしで 導入できる可能性がある。
  7. 河野恵美@東京女子大学大学院
    「中等度難聴者のニーズと情報補償」
    ろう教育科学会で発表した内容。中等度難聴のある人の ニーズやそれへの対処は、丁度ロービジョンのある 人へのニーズやそれへの対応ように遅れている。 視覚障害があると聴覚が重要になるので、中等度の難聴が ある場合にどのような困難があるかを述べた。全ろうでは なく聞こえてしゃべれるので、補聴器だけですべてが解決すると 思われてしまったり、補聴器も他人から見えないと障害がない ように思われてコミュニケーションに困難が残ることがある。 FM補聴器がないと多数が同時に話す演習などは聞き取れず、 補聴器だけでは疲労がひどく聴力の一時的低下なども経験する。 要約筆記の付加的導入が効果をあげることがある。
  8. 小田浩一@東京女子大学
    「2006年度日本ロービジョン学会学術総会」
    2006年の日本ロービジョン学会学術総会は小田が会長(主催者)に なることになっている。どのような会にすると良いかを研究会の参加者から 意見聴取した。

PS. 東京女子大学は一斉休業中で、ネットワーク工事とワックスがけで会場を二転三転した。 大学前のペーパーバンも休業中で、二次会は吉祥寺まで出て居酒屋で開催した。10名が 参加(吉祥寺の町で店を探しているときから、なぜか変なおじいさんがお尻についてきたが 同席しようとするもお断りした)。


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