川嶋英嗣&小田浩一, 2003/3/8
日時:2003年3月8日 (土) 13:00 -
場所:東京女子大学コミュニケーション学科会議室(8号館4階)
(敬称略 一部を除いて五十音順)
13:25-14:00
はじめには、小林巌さんが今年4月に岩手県立大学から学芸大学学内共 同教育研究施設の特殊教育部門にトラバーユすることになったという報告。 今年度担当した卒論については、重要度が低いのでタイトルだけ。大学院では障 害支援技術の半期科目を今年初めてで最後に担当した。そのときの学生の反応を 中心に手書きの感想文から紹介した。 (注)タイトルにある重要度の指標は発表者本人による。
透光体混濁をもつロービジョンシミュレーションをして、街灯のある比較的 暗い道に障害物を置き、エイドなし、白杖のみ、懐中電灯のみ、白杖と懐中電 灯の両方を使ってあるいたときの移動成績を比較した。衝突だけで見ると白杖 利用の有無が効く。移動速度で見ると懐中電灯が効果がある。懐中電灯と白杖 の両方がベストである。また、懐中電灯は訓練なしにすぐに利用できた。
spotting, tracing, tracking, scanning という望遠鏡の操作のうち基本の spottingとtracingについて短期訓練プログラムを作って白濁のロービジョンシ ミュレーション(視力0.02)をした晴眼者4名Neizの6,8倍の単眼鏡で訓練し 効果を調べた。訓練前に10課題で行動のベースラインを評価したあと、 プログラムは、広大式の訓練プログラムを参考にし1訓練30分、1週2-3回、 二週間行い、訓練後に訓練前と同じ課題で再評価して効果をみた。全体で 一人210分の訓練で料金表の利用に有意な効果があり、ピント合わせや 疲労感、発見のしかたが主観的には相当改善された。
求心性視野狭窄の場合ページナビゲーションが困難なので、CCTVのXYテーブ ル操作と画面のscanningを取り出して訓練したグループと自己流で訓練したグ ループで比較した。求心性視野狭窄3度のシミュレーションをした20代の晴眼の 学生CCTV上で視野内に2文字がはいるようにして訓練した。訓練は全体で5セッ ション、それぞれ訓練するごとに小学校6年の教科書の文章で速度を測定した。 回数の主効果のみ有意になりグループ間に違がなかった。特別な訓練でなくとも ともかくCCTVで読書することに意味があることが分った。ただ、高齢の ユーザでは操作の学習に困難がある可能性があり、20代の結果とは異なる かもしれない。
視野障害があるとテキストを提示する方向によって読書の成績が異なると いわれているが、日本語のテキストの場合視野障害の形との間でどのような 交互作用があるかを見るために縦長か横長のスリットをつくり、縦書き日本語 テキスト、横書き日本語テキスト、それらを90,180,270度回転させたテキストで 読書速度を比較した。スリットは行方向に6文字入るが90度回転したテキスト では同じ行の文字が1文字しか見えない(他に3行分1文字がみえるが)。 当然スリットにテキストの同じ行の文字が複数見えるときの読書速度が 速かったが、興味深かったのは、 日常の読み行動に近いナビゲーションが可能なテキストの 方向で速かった。つまり、縦書きテキストを横長スリットで読む場合、 時計回り90度に回転したテキストより反時計回りに回転したテキストの 方が速くよめることが分った。
訓練教材を対象者に合せ、進度に合せ、提示順序をランダムにして、 つねに対象者の見ている位置に提示するプログラムを Microsoft Accessを使って作り効果を調べた。ぼけた文字を提示するので なく、pcMNREAD-Jで測定した読書視力の文字サイズで提示して3名の ロービジョンシミュレーションゴーグルをかけた晴眼者3名に247文字を 訓練し、訓練後にふたたびpcMNREAD-Jで読書評価をして訓練前と比較した。 全員で訓練効果があり、読書速度が全体に速くなっただけでなく、 CPS未満の文字サイズの速度が大きく上昇し、実用にならない速度 だったのが、実用レベルで読めるようになり、CPSが小さくなっている かもしれないケースがあった!
体調不良のためキャンセル。とても残念でした。
pcMNREAD-JをPowerBook G4(OSX) +液晶プロジェクタで、また、WindowsXPで 動作しているTablet PCで動作させ、同じ被験者で読書評価をして同じ結果が 得られること、読書評価が簡単にできることをデモした。また、その結果を 氏間さんのHTMLviewer 2.03 に反映させて教材をbrowseした。Tablet PCとは、 タッチパネル式の液晶ディスプレイ+無線キーボードで構成されるPCで、 PaceBookという機種を使用した。
6mmの木材を2.7cmの長さにして作成したPonzo図形を触覚で 観察したところ、視覚では錯覚が得られているのにも関わらず 触覚では錯覚がみられなかった。錯覚のおこるメカニズム が視覚化によるものではないという可能性もあるが、 刺激を再考する必要があるかもしれない。
仙台市からの委託事業として行っている在宅の歩行訓練について 仙台市に報告した内容をベースにこの1年の訓練事業について 説明した。
総合的な学習の時間は、子供の問題解決能力、課題に 粘り強く取り組み、目的を達成する力を教員の援助のもとに育てようという ものである。盲学校では、生徒数の少さ、障害のタイプや 程度の多様性によって、視覚障害そのもののために問題解決には 健常の生徒に比べてより多くの困難がある。それらをふまえた総合的な学習の 時間を行っている様子を紹介した。