第13回 小田研究室 月例ロービジョン研究会

* 第13回の幹事は,中村さんでした.このページは,彼女の作ったものを元に小田が加筆・修正したものです.

1. 日時

 2月27日(土)11:00〜18:00

 

2. 場所

 東京女子大学善福寺キャンパス8号館4Fコミュニケーション学科会議室

3. 参加者(五十音順、敬称略)

  1. 新井@国立特殊教育総合研究所(研究員)
  2. 上田@警察病院眼科(初参加,視能訓練士)
  3. 尾形@国立身体障害者リハビリテーションセンター学院(学生)
  4. 小田@東京女子大学(教員)
  5. 川嶋@筑波大学(大学院生)
  6. 小林章@国立身体障害者リハビリテーションセンター学院(教員)
  7. 鈴木@山梨県立盲学校(教員)
  8. 田中@杏林大学医学部眼科(視能訓練士)
  9. 中村@東京女子大学(小田研居候,視能訓練士)
  10. 西脇@杏林大学病院眼科(視能訓練士)
  11. 藤田@駿河台日本大学病院眼科(眼科医)
  12. 松田@作新学院大学(教員)

 

4. 日程

11:00-12:00 小田@東京女子大学

--- 12:00-13:00 lunch break ---

13:00-13:30 松田@作新学院大学

13:30-14:00 中村@東京女子大学(小田研居候,視能訓練士)

14:00-14:30 尾形@国立身体障害者リハビリテーションセンター学院

14:30-15:00 新井@国立特殊教育総合研究所

--- 15:00-16:00 coffee break ---

16:00-16:30 西脇@杏林大学病院眼科

16:30-17:00 小林章@国立身体障害者リハビリテーションセンター学院

17:00-17:30 川嶋@筑波大学

17:30-18:00 鈴木@山梨県立盲学校

--- 19:00- 時間のある参加者はペーパーバンで夕食 ---

 

5. 発表要旨ならびに資料へのリンク

小田@東京女子大: 読書速度と文字サイズの関係

 plasma display を使い視角27度までの文字を提示した結果,日本語についてもLegge et al (1985) と同じ読書速度のprofileを得た(晴眼の被験者15名についての中間報告).

小田@東京女子大学: 文献報告

 Fine and Rubin (1999b). Reading with simulated scotomas: atteding to the right is better than attending to the left. Vision Research, 39, 1039-1048.

 中心視野欠損のある人では,周辺網膜を使って読書をすることを学 習せねばならない.このためには,多くの人は,中心窩に変わる preferred retinal locus(PRL; 選好網膜部位)を獲得する必要があ る.加齢性黄斑変性(AMD)により中心視野に欠損がある患者の場合, 視野の側で言って暗点の近くの左側にこのPRLを選ぶことがもっとも 多い.このPRLの選び方は,読書の適しているのはないかと仮定され てきた.晴眼者を人工的に視野の半分+3.2度で読ませるようにして この仮説を調べてみたところ,文字の同定,単語の同定,読書のす べてが,左視野で遅かった.これは,主に刺激を継時的に読む際に 必要なサッカードの数によるものであった.このデータが示唆する のは,読書の点から言えば,AMDの患者は,PRLを暗点の左よりも右 に選択した方がベターであろうということである.

小田@東京女子大学: MNREAD-JとJKを両方正しく分析するプログラム: MNAJ06

  MNAJ06のwebページを参照されたい.

松田@作新学院大学: 日本語文の読みにおける表記形態の効果

 漢字かな交じり文か,ひらがな書き下し文か,文節の間にスペースがあるかないかによって,読書速度にどう影響があるか,また,読書時の眼球運動にどのように影響があるかを調べている実験の中間報告.

中村@東京女子大学(小田研居候,視能訓練士):  東京都内における視覚障害関連機関の見学報告

 東京都視覚障害者生活支援センター(旧失明者更正館),社会福祉法人日本点字図書館,財団法人東京都地域福祉財団東京都福祉機器総合センターの三カ所の見学の結果を,東京都内でロービジョンのサービスを行うための資源としての視点から紹介した.

尾形@国立身体障害者リハビリテーションセンター学院: 両前腕欠損視覚障害者の食事用自助具・白状の試作

 事故により両前腕欠損ならびに視覚障害になったケースに対して食事用自助具・白状の試作している過程の報告.

新井@国立特殊教育総合研究所: 白子症と白内障のロービジョン児童の羞明とコントラストポラリティー効果

 白内障を合併しているケースでは,コントラストポラリティ効果がみられたが,それ以外では,みられなかった(中間報告).

西脇@杏林大学病院眼科: 視覚障害者にとって利用しやすい公共建築物

 公共建築物としての病院には,特に視覚障害を有する人が多く訪れるが,現代の建築様式は,ロービジョンにとって使いにくい仕様を標準としている.その1つ1つについて実際に視覚障害のユーザに意見をききながら,改善の方策を探っている(中間報告).今回は,特に明るさコントラストの低い配色(同系色)の問題が多く報告された.

小林章@国立身体障害者リハビリテーションセンター学院: 市販されているルーペの表示倍率と実際の倍率について

 市販されている拡大鏡には,倍率(拡大率)かディオプターの表示があるが,レンズメータで実測してみると表示と必ずしも一致しない.倍率を1/4ディオプターにする企業と1/4ディオプター+1にする企業があるが,同じ会社の製品の中に,同じ倍率表示で最大1.83倍もディオプターの実測値が異なる場合があり,表示倍率を鵜呑みにできないことが分かった.これは,実際にエイドを処方する場合の体験とも一致するものである.

川嶋@筑波大学: 文献報告

 Fine and Rubin (1999a). Reading with central field loss: number of letters masked is more important than the size of the mask in degrees. Vision Research, 39, 747-756.

川嶋@筑波大学: ヒトを対象とした生物医学研究への勧告「ヘルシンキ宣言」について

 ヒトを被験者にした研究において,インフォームド・コンセントは次第に重要になってきている.ヘルシンキ宣言に従った手続きの有無が,論文として投稿を受け付けるかどうかの要件にもなってきた.ここでは,実際にどのような承諾を得ればよいかについて,ミネソタ大学のロービジョン研究室の例から日本での研究に応用する場合の案を提示した.

鈴木@山梨県立盲学校: 

 山梨県立盲学校における教育相談の活動内容について概観し,盲学校で行う弱視相談では,どこまでできるのか?について研究会に参加の医師,視能訓練士と意見を交換した.その結果,盲学校で視力検査を行ったり,エイドの紹介を行うこと自体には問題はない(医師でなければ,教育現場においても視力検査やエイドの紹介ができないということはない)こと,山梨県立盲学校が地域の視覚障害サービスのセンターとして有効に機能するためには,医療関係者と適切な連携をとりながら,現在のサービスを維持拡充していくことが良いということになった.


(C). All rights reserved by Koichi ODA, 1999/3/1. If anything, write to k-oda@twcu.ac.jp.