MNREAD-J Q&A

小田浩一,歓喜仁美,川嶋英嗣,田中恵津子 1998/10/11-2010/10/26

1. チャート・デザインに関して

・Qこのチャートは,小学校高学年から使用可能と言う事ですが,それ以下の年齢が使用出来るチャートはないのでしょうか?

 チャートの文章が読めるだけの学力がない人には,どうしたら良いのか

・A:ひらがな2〜4文字の単語からなるひらがなチャート(MNREAD-JK)を作成しています.まもなく,一般に試用できる水準に達すると思います.このひらがなチャートは,漢字を十分学習できていない人にも使うことができます.外国人でひらがなを知っている人にも使うことができるでしょう.

 

・Q日本語の場合,日常で縦書きの書物を読む機会が多く,縦書きの評価も必要と考えますが,縦書きのチャートはないのでしょうか?

・A:縦書きの場合,横書きと比べて極端に読書のパフォーマンス(MNREAD-Jで推定するところの,読書視力や臨界文字サイズ,読書速度)が変わるとは考えにくいのですが,視野障害が縦書きに適したような形になっている場合など,その評価が必要になる場合もあるでしょう.日本の新聞は縦書きでもあり,なぜ理工系の書物でしか目にしない横書きのチャートで測定するのかというクレームもあります.縦書きのチャートは,現在作成中です.

 

Q3チャートにはlogMARという単位が書かれていますが,これはどんな単位ですか?

A3:logMARとは,国際的に使用され始めた視力の単位です.最小分離閾の視角(MAR; Minimum Angular Resolution)を常用対数にしたものです.日本ではもっぱら小数視力が使われていますが,少数視力とlogMARの関係を説明すると,小数視力1.0は,最小分離閾が視角1分になるので,log101で,logMARは,0になります.logMARでは,つまり,小数視力からlogMARに換算するには,一般的に以下の式を使います:

logMAR視力 = log10(1/視力)

 少数視力 0.1 は,1.0 logMAR,同0.01で 2.0 logMARと,少数視力で1/10になるごとに logMARでは1ずつ増えていきます.数が多い方が,視力障害が重篤だということです.MNREAD-Jチャートの中の最も大きな文字は1 .3 logMARで, 30 cmの距離から見て少数視力で0.05の視表に相当します.また,最小の文字 -0.5 logMARは同じく,少数視力で3.1の視表に対応します.

 

Q4.1なぜ,文字サイズをlogMARで表す必要が有るのですか?

A4.1:あえてlogMARで表す必要はないかもしれませんが,log で表したときに同じ間隔で文字サイズが変化している方がよいことが多いのです.このチャートは上から下に向かって,0.1 logMARの単位で文字サイズが小さくなっています.別の言い方をすると,約26% ずつ文字サイズが小さくなっています.logスケール(対数尺度)を使うとどんな検査距離を使っても,文字サイズの相対的な関係が変わりません.また,標準検査距離以外での測定結果が簡単に換算出来ます.ロービジョンの状態では,標準距離で測定が困難なことも多く,最大の文字サイズ1.3logMARより大きな文字を必要とする場合もあるからです.

 

・Q4.2: logMAR値から文字の視角は,どうやって求められのですか?

 

・A4.2: logMARは,最小分離角(視角)を常用対数で表したものになっています.また,MNREADでは,その5倍のサイズの文字が,MNREAD-Jでは,MNREADの2.24348倍の文字が使われています.そこで,x logMARの日本語の文字の視角は,以下の式でもとめることができます(日本語の書体が本来持っているサイズの比率の関係でひらがなは,この値より少し小さくなります).

視角=10 x*11.4 (分)

 たとえば,1.3 logMARの文字サイズは,101.3 x 11.4 = 227 分,あるいは,その60分の1の3.8度の視角になります.

 

・Q4.3: logMAR値からポイントサイズへの変換は,どうすれば良いのですか?

・A4.3: logMARから視角を計算し,そのtangentに定数をかけてポイントサイズに換算できます.その式は,以下のようになります:

ポイントサイズ = tan(10logMAR値*5/60)*1908

*ExcelのTAN()関数は,角度の単位がラジアンなので,注意を必要とします.Excelを使う場合は,以下のような式を使って下さい(A1セルにlogMAR値が入っていると仮定しています):

=TAN(10^A1*5/60*PI()/180)*1908

logMAR

point size

1.5

87.8174614

1.4

69.7377247

1.3

55.3855446

1.2

43.989743

1.1

34.9400105

1

27.7526921

0.9

22.0441732

0.8

17.5100217

0.7

13.9085605

0.6

11.0478901

0.5

8.77561485

0.4

6.97070051

0.3

5.53701514

0.2

4.39820291

0.1

3.49361447

0

2.77507547

-0.1

2.20432022

-0.2

1.7509535

-0.3

1.39083166

-0.4

1.10477679

-0.5

0.87755536

 

 

Q5チャートの文字は,明朝体でプリントされていますが,個々のロービジョンのケースで見やすいフォント(書体)を評価する必要が有るのではないでしょうか?

 明朝体以外のフォントで印刷されたチャートはないのでしょうか?

A5:日本で一般に入手できる印刷物は,そのほとんどが明朝体で印刷されています.新聞であれ,雑誌であれ,書籍であれ,見出しや強調部分では他のフォントを使っていても,本文には明朝体を使っています.そのような印刷物を読むときに,どのようなエイドを使ったらよいかということを調べるためには,MNREAD-Jは明朝体で印刷されている必要があるのです.

 もちろん,小学校の児童の学習環境を想定した場合,教科書体での評価が望ましいこともあるでしょうし,拡大教科書を作ることを考えると,ゴシック体ならば何ポイントで印刷するのが良いかということを評価したい場合もあるでしょう.ゴシック体はロービジョンの人に見やすい文字であることは良く知られています.これまでの研究から,教科書体では明朝体とほぼ同じ結果であり,ゴシック体ではおそらく臨界文字サイズや読書視力が少し向上するでしょう.明朝体で得られた結果から,そのまま拡大教科書の印刷文字サイズを決めれば,ゴシック体で印刷した場合,臨界文字サイズより大きくなるでしょうから,読みにくくなるということはないでしょう.ページ数は少し増えるかもしれません.

 印刷フォントの変更は比較的容易ですが,あまり多くの種類のチャートを作ると測定が煩雑になり,あまり実用的ではありません.今後フォントの違いが無視できないほど大きな影響を与えることがはっきりしてきたら,つくるかもしれません.

 

・Q: デザインを同じにして学年別の読材料でチャートを作れるでしょうか?

・A: 原理的には可能ですが,あまり実用的と思われません.

 

Q6チャートの行間,文字間はどのようにきめられたのでしょうか?

A6:文字間も行間も新聞と同じくらいになるように作られています.1行の長さも新聞では,たいだい12文字なので,それを目安にしました.ただ,12文字にすると1.3 logMAR(少数視力で 0.05)の文字サイズが紙に収まらなくなるので,10文字で妥協しました.1行だけを表示するのではなく,3行にしているのも,実際の読み物にできるだけ近い書式にするためです.そうすることで,実際の読書をするときにどのくらいの文字サイズでどのくらいの速度がでるのかを測ろうとしています.

 

Q7チャートに書かれているM sizeの値は何を表しているのですか?

A7:Mとは拡大を表す英語, Magnificationの頭文字で,新聞を読むのに必要な倍率を表しています.例えば,MNREAD-Jで評価を行い,読書に最適な文字サイズ(臨界文字サイズ)が1.0logMARであると推定された人の場合,その文字サイズのM値は 4.0ですから,新聞をそれなりのスピードで読むためには,4倍に拡大すれば良いということになります.これは,エイドを処方する時の参考になります.

 logMARの値からM値を求める式は,次のようになります:

M値 = 10(臨界文字サイズのlogMAR - 0.4)

 もっとも,こんな式を使わずとも,チャート上で対応するM値を調べればすみます.30cm以外の距離で検査したので,あとで臨界文字サイズを補正したとしても,その補正した臨界文字サイズのlogMARの値がいくつのM size になるかを知るには,チャートにもどって対応する値を調べる方が面倒な計算をするよりもずっと簡単で確実です(詳細は後述しています).

 

・Q: チャートをコピー機で複製して使用できますか?

・A: チャートでは,文字サイズが非常に正確に印刷されています.コピー機では,これを正確に複製できません.特に小さな文字サイズでは,コピーでは文字がつぶれてしまいます.また,白黒を反転したチャートでは,均質な黒い背景が複製できません.ですから,白地に黒い文字のチャートの,しかも大きな文字サイズの部分については,コピーでもかまわないかもしれませんが,それ以外の部分では,コピー機で複製したチャートでは不十分な精度しか出ないといって差し支えないと思います.

 

・Q: 知能検査のように,健常者のデータをたくさん収集して標準化してあるのでしょうか?

・A: 検査には,知能検査のように相対的な値を出すものと,身長測定のように絶対値の出るものがあります.前者では,ノーマルのデータを基準値として必要とするために,検査が実用的になるためには,それ以前にノーマルのデータベースを必要とします.一方後者では,175cm という身長を測定するためにノーマルのデータベースを必要としません.現在の人間の平均身長がどのくらいかということは,175cmという測定結果に影響を与えないわけです.MNREADの測定しているのは,後者に属するものなので,標準化を必要しません.ただ,検査の信頼性は,複数回繰り返したの検査の間の一致度をみることにより一定の保証を得ています.

 

・Q: ただ文章が次第に小さく印刷されているだけのチャートなら自分でも作れると思うのですが.

・A: もちろん「ただ文章が次第に小さく印刷されているだけのチャート」ならば,誰にでも簡単に作れます.MNREADでは,それ以上の細かい調整が行われています.使われている文章について良く吟味されていますし,分析の方法も確立しています.データもたくさん蓄積されています.独自のチャートを一から作るより,そのまま利用する方がずっとコストは少ないはずです.

 

2. 測定手順に関して

・Q: 測定のマニュアルには,80 cd/m2以上の輝度で測定するようにと書いてありますが,単位は何ですか?

 検査時の照明はかなり明るい必要がありますか?

・A: cd/m2は,キャンドル・パー・スクエアメーター(candle per square meter)と読む,輝度の単位です.輝度とは,照度と違って照明の明るさを測る単位でなく,物体の明るさ(ここでは,検査チャートの白い部分などが実際にどのくらいの明るさか)を測る単位です.輝度計という,照度計に比べてずっと高価で,特殊な測定装置を使わないと測定できないものです.

 ただ,検査時の検査チャートの明るさを示す80 cd/m2は,日常の読書環境とかなり近い値です.机の上で蛍光灯をつけて白い紙に書かれた本を読んでいるときと同じくらいだと思ってください.眼科の外来で言えば,視力検査の照明要件より,いくぶんゆるいと考えてください.

 

・Q: 読書の成績に照明の効果はないのですか?

・A: 晴眼者の場合には,輝度が80 cd/m2あれば,読書の成績は,ほとんど最大の状態ですが,高齢者は一般により照明を明るくするとずっと見えるようになりますし,ロービジョンの人の中には,照明を上げると読書の成績が良くなっていく人があります.

 その場合どう扱うべきでしょうか?患者が実際に読書する環境の照明を変更できるのならば,適した照明の程度を測定するために,照明を変えつつ視力などを計り,現実的な照明のレベルが決まったら,その照明レベルで読書成績を測定して,必要なエイドの倍率などをしらべるのが良いでしょう.照明を変化させつつ読書成績を測らないのは,視力検査の方が労力がすくないからです.

 ただ,患者はいつも照明を持ち歩くことができるわけではないので,80 cd/m2というような,比較的一般的な室内の明るさに近いところで検査したデータの方が,役に立つことが多いと思われます.

 

・Q: ロービジョンでは,5-10cmというような近い距離で読む人が多いはずだが,30cmでの測定では正しく測定できるといえないのではないか?

・A: その人の通常の読書距離で測定して,あとで距離の換算をしても良いのですが,5〜10cmの距離では測定が,むつかしいです.読書視力や臨界文字サイズなどの値(logMARで表した場合)は,30cmで測定した結果と別の距離で測定した結果を補正した値は等しくなるはずです.等しくならない場合は,屈折異常が十分矯正されていない,視距離が近すぎて像がぼやける,視野が暗くなるなどの何らかの理由があるはずです.強度の近視があって屈折矯正が十分でない場合は,近い距離での結果が良くなることがありますが,それ以外では,逆にあまり近い距離では,結果は悪くなります.したがって,30cmの距離で測定できる場合には,そうすることが望ましいです.読書の距離としても,30cmの距離をとって無理のない姿勢で読むのが,一般にいって望ましいです.そのためには,通常の読書距離で臨界文字サイズ以上になるようにすることが重要です.

 

・Q: どれくらいの大きさまで読ませたらいいのですか?

A: 全く読めなくなるまでです.1文字でも読めるようだったら,がんばって読んでもらって下さい.患者をできるだけはげましてください.時間をかければギリギリ読めるという測定値がないと,読書視力や臨界文字サイズの推定が正しくできないのです.ただ,1文字読むのに1分以上もねばるような場合は,逆に無理をしないように指示ください.1つの文書は30文字ありますから,それだけで30分かかってしまいますし,そんなに遅いのでは,読書の検査といえません.

・Q: その場合,30文字中1文字しか読めないのに,それから最適文字サイズを算出するということに意味があるのですか?

・A: それ1つを使って臨界文字サイズを決めるわけではありません.逆に,測定値が最大読書速度ばかりだった場合を考えてください.臨界文字サイズを決められるでしょうか?もっと小さな文字を調べてみて,明らかに遅くなったことが分かってはじめて,その直前の文字サイズが最適だと判断できるわけです.読書視力については,もっとシビアな部分を探します.そこで,1文字でも読めるところを探す必要があるのです.

 

・Q: 途中でいやになって投げ出してしまったら?

・A: 少し休憩してから再チャレンジしても良いですが,できるだけ一度に測りきるよう,患者を励ましてください.測定時間はだいたい10分か,長くともせいぜい30分くらいのものです.

 

Q8測定手順として,測定時間を短縮したい場合には,視力が分かっていればそれより数段低いところから始めてもよいということですが,視野が狭い人の場合はどうなんでしょうか?

 視力は良いが,求心性視野狭窄の(周辺視野に感度の低下や欠損がある)ロービジョンの人の場合では,その人に読みやすいと予測される文字サイズより大きな文字サイズでの読書速度の変化を見るために,全ての文字サイズで測定をした方が良いのではないでしょうか?

A8:指摘の通り,網膜色素変性症などで視野が狭い場合には,大きな文字サイズでは,また読書速度が下がります.つまり,小さくても大きすぎても読みにくくなるわけです.その場合,どのくらいの文字サイズのレンジで最大読書速度が出るのかを調べるために,最大の文字サイズの1.3logMARから測定するのが良いでしょう.

 

Q9患者が,最初は間違って読んだが,途中で間違いに気付き正しく読み直した場合は,どのように記録をしたら良いのでしょうか?

A9:その文字は,正しく読めたものとしてカウントし,読み損じにしないで下さい.その場合,測定時間は,読み直した時間も含めて記録して下さい.読み直せば相当に遅くなるので,患者には,多少読み間違えても気にせず読み続けるよう進めてください.

 

・Q: 読める大きさだけど,あわてて読んでしまって間違いだらけの場合は繰り返してもいいのですか?

・A: そのまま記録して,繰り返しはしないでください.一度読んだ文書の読書は,そうでない場合と同じに扱うことができません.次ぎからは正確かつできるだけ早く読むように指示してください.練習でペースをつかんだら,本番でのこういうトラブルは,あまり起きないはずです.

・Q: 改行を間違えて読んでしまった場合はどうすれば良いでしょうか?

・A: 視野の問題があるのかもしれません.スコアシートの余白に特記して注意する必要があるかもしれません.1行とばしてしまった場合は,1行分の10文字は読めなかったと記録して,測定を繰り返さないでください.その分読書時間は短くなっているはずので,読書速度や臨界文字サイズの推定には,それほど問題は起こらないでしょう.

 同じ行を繰り返して読んだり,本人がとばしたのに気づいて繰り返した場合は,普通の読み誤りと同じで,正しく読めたものとして扱って,読み直した時間も含めて全体を読書時間として記録してください.繰り返した分だけ読書時間は長くなりますが,それが,まさにその人の読書を遅くしている原因であり,日常の読書でも,その行替えの失敗を繰り返しているはずですから,それを含めた検査をする必要があります.

 

Q10MNREAD-Jで,読書視力,最大読書速度,臨界文字サイズが推定できますが,これらの値を臨床でどのように活用したら良いのでしょうか?

A10:臨界文字サイズは,エイドの倍率を決める時の指標になります.例えば,あるロービジョンの患者で測定したところ,臨界文字サイズが0.7logMARだった場合,M値は2倍ですから,新聞を読むには2倍のエイドを必要としていることが分かります.また,最大読書速度は,エイドが適切で有るかどうかの指標や読みの訓練の目標値にになります.更に,白地に黒のチャートとその反対に黒地に白で印刷されたチャートで成績を比較する事によって,白黒反転をするためのエイドが必要かどうかを調べることが出来ます.

 

Q10白黒反転したチャートはどう使うのですか?

A10:黒地に白い文字で印刷されたチャートが読みやすい人の場合は,拡大読書器(CCTV)などの白黒反転できるエイドが効果があります.ノートをとるときにも,黒い画用紙に白いマジックインキが書きやすいはずです.本当に読みやすいのかどうかは,白地に黒で印刷されたチャートと読書速度や臨界文字サイズを比較してみれば,はっきりします.それには,どのチャートをどのように使うかを以下に説明します.

 チャートには,J1-0, J1-1, J1-1R, J1-2, J1-2Rの5種類があります.このうち,J1-1とJ1-1Rには,同じ文書が使われています.同様に,J1-2とJ1-2Rにも同じ文書が使われています.そこで,白黒反転の効果があるかどうかを調べるには,最初に白地に黒で普通に印刷されているチャートで普通に検査した後,黒地に白で印刷されているチャートで検査します.その場合,J1-1を最初に使った場合には,J1-2Rを使ってください.同様にJ1-2の次ぎには,J1-1Rを使うようにしてください.一度読んだ文書は,二度目に読むときにはすらすら読めるからです.同じ文書のチャートを使うと,白黒反転したから読みやすくなったのか,文書を覚えたから読みやすくなったのか分からなくなってしまいます(これを間違って解釈すると,すべての人が高価な白黒反転エイドを必要とするようになります).

 まぶしさを訴える人や,疾患から羞明があると予想される場合には,白黒反転が有効なことが多いので,まず,読書検査の練習のさいに,黒地に白のチャートもちょっと見せてみて,読みやすいかどうか確認するのが良いと思います.読みやすい感じがするという場合には,2種類のチャートの成績を比較してみる必要があるでしょう.

 

Q11: 新聞以外の印刷物を読みたい場合の倍率はどう決めるのですか?

A11: A10で説明した同じ人の場合を例にします.まずその人の読書の臨界文字サイズを調べます(2倍).次ぎにこの人の読みたい本の文字サイズをチャートの文字と比べて,そのM値を求めます.その人が読みたいと持ってきた本の活字のサイズに一番近いチャートの文字のM値が0.6だったとします.エイドの倍率は,次のようにM値同士で割り算をして求めることができます:

拡大率 = 臨界文字サイズのM値/その人の読みたい文字サイズのM値

 したがって,この例の場合エイドの拡大率は,2/0.6=3倍強になるでしょう.

 

・Q: 最大読書速度になるように処方して,それで出ない場合にはどういうトレーニングプログラムをおこなえばよいでしょうか?

・A: トレーニングのプログラムとして,どのようなものが適切かということは,このチャートに対する質問ではないので,ここで答えるべきことではないのですが,トレーニングプログラムやエイドが適しているかどうかは,このチャートを使って,調べることができます.トレーニングプログラムの実施前と実施後で,あるいは,途中で読書の成績がどう変わってきたかを調べるのには,MNREADチャートは便利です.

 また,臨界文字サイズから拡大率を求め,白黒反転を考慮に入れてエイドを処方したにも関わらず,最大読書速度が出ないという場合には,そのエイドに何か問題があります.同じ倍率のもので,別のタイプのものを探すなり,照明や読書材料に問題がないかなどの原因を調べる必要があります.また,最終的には,測定そのものが正しく行われたかどうか,眼の機能に変化が起こっていないかなどを疑ってみる必要が出てくるかもしれません.


k-oda@twcu.ac.jp, 1998/10/11 @ Oda Laboratory, Tokyo Woman's Christian Univ.